【映画評】LOGAN ローガン | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

どうも。ノーベル賞物理学者の真鍋淑郎が通算60年も米国を研究の拠点にし、米国籍まで取得していることを日本人は重く受け取らなければなりません。「日本スゴイ!」と浮かれていたらバカです。

 

それはさておき、映画の感想文を書きます。今回は『LOGAN ローガン』です。

 

ミュータントの大半が死滅した2029年。長年の激闘で疲弊し、生きる目的も失ったローガンは、アメリカとメキシコの国境付近で雇われリムジン運転手として働き、老衰したプロフェッサーXことチャールズ・エグゼビアを匿いながら、ひっそりと暮らしていた。そんなある日、ローガンの前にガブリエラと名乗る女性が現れ、ローラという謎めいた少女をノースダコタまで連れて行ってほしいと頼む。組織に追われているローラを図らずも保護することになったローガンは、チャールズを伴い3人で逃避行を繰り広げることになるのだが……(映画.comより引用)。2017年日本劇場公開作品。監督はジェームズ・マンゴールドで、出演はヒュー・ジャックマン、パトリック・スチュワート、リチャード・E・グラント、ボイド・ホルブルック、スティーヴン・マーチャント、ダフネ・キーン。

 

X-MEN」シリーズのスピンオフであるウルヴァリン」シリーズの完結編です。ウルヴァリンことローガン(ヒュー・ジャックマン)は治癒能力が低下し、戦いで傷だらけになります。プロフェッサーXことチャールズ(パトリック・スチュワート)はアルツハイマー型認知症が進行し、自分の特殊能力を制御できなくなっています。

 

本作はヒーローの老いを描いている、アメコミ実写化作品にしては珍しい映画です。老いを描くという点でクリント・イーストウッド作品に近いものがあります。ローガンたちが住んでいるアメリカとメキシコの国境はマカロニウエスタンのように乾いた風景なので、イーストウッドを意識したのではないでしょうか。

 

老いた二人のミュータントと対照的に、若いミュータントたちが登場します。ローラ(ダフネ・キーン)もミュータントであり、少女でありながら高い戦闘能力を発揮します。『キック・アス』でクロエ・グレース・モレッツが演じたヒット・ガールのように、異常に強い少女というキャラクターは面白いです。

 

チャールズとローラを守るため、ローガンは軍との戦いに身を投じます。そこで描かれるのは無敵のアメコミヒーローとしてのウルヴァリンではなく、ミュータントとしての業を背負った個人であるローガンの物語です。だからローガンは傷だらけになり、そのバランスで作品全体の暴力描写も生々しくなっています。

 

「X-MEN」シリーズは少数派の異端者であるミュータントへの差別や迫害をテーマにしています。そのため、思想的に見ればリベラル的な色合いが強いです。逃走中のローガンたちを温かく迎え、一時の安らぎを与えるのが黒人の農家であることにも、それが表れています。

 

本作においてミュータントの敵であるのは軍の研究所であり、人間の役に立つ兵器=道具としてミュータントを作り出しています。研究所ではミュータントを作る手段としてメキシコ人女性の子宮と生命を消耗品のように扱い、計画中止になれば幼いミュータントたちを抹殺します。ここで悪しく描かれているのは軍需産業、人種差別、女性蔑視であり、これらはアメリカ右派への批判になっています。

 

本作で「ウルヴァリン」シリーズは完結しました。もし復活することがあれば、マーヴェル作品なのでディズニー配給になります。ディズニーは「ウルヴァリン」シリーズ及び「X-MEN」シリーズの重いテーマを活かせるのでしょうか。

 

★★★★☆(2021年9月13日(月)DVD鑑賞)

 

 

 

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