【映画評】エイリアン:コヴェナント | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

どうも。泥棒(サイバー攻撃)する奴は間違いなくクソですが、戸締りの悪さ(ITセキュリティーゆるゆる)を問題視しないと、また泥棒に入られるでしょう。

 

それはさておき、映画の感想文を書きます。今回は『エイリアン:コヴェナント』です。

 

滅びゆく地球から脱出し、人類移住計画を託された宇宙船コヴェナント号には、カップルで構成された乗組員が搭乗していた。やがて人類の新たな楽園となるであろう未知の惑星にたどり着いたコヴェナント号だったが、そこには想像を絶する脅威が存在していた。その恐怖を目の当たりにした乗組員たちは、命からがら星からの脱出を試みるのだが……(映画.comより引用)。2017年日本公開作品。監督はリドリー・スコットで、出演はマイケル・ファスベンダー、キャサリン・ウォーターストン、ビリー・クラダップ、ダニー・マクブライド、デミアン・ビチル。

 

エイリアン』の前日譚である『プロメテウス』の続編です。本作単体でも楽しめますが、『エイリアン』と『プロメテウス』を観ておけば、より楽しむことができます。

 

女性乗組員ダニエルズ役のキャサリン・ウォーターストンは、『エイリアン』におけるシガニー・ウィーバーのポジションを与えられています。シガ二ーより華奢に見えますが、タフなアクションシーンをこなしています。

 

ダニエルズの恋人であるジェイコブ船長が事故死したことによって、オラム副船長(ビリー・クラダップ)が役職を引き継ぎます。しかし、乗組員たちから慕われないオラムは不安と焦りから判断を狂わせ、事態を悪い方向へ導いてしまいます。合理性が重視されるSF映画であっても、軸にあるのは非合理的な人間的感情です。

 

『プロメテウス』の人造人間デヴィッド(マイケル・ファスベンダー)が再登場します。コヴェナント号にもデヴィッドそっくりの人造人間ウォルター(ファスベンダーが二役)がいて、この二人の会話が哲学的です(人造人間=レプリカントであり、『エイリアン』シリーズと『ブレードランナー』は同じ世界の出来事のように思われます)。

 

人造人間の創造主=人間は自身に似せた者を創造したにもかかわらず、エイリアンの創造主=人造人間は自身に似ていないグロテスクな怪物を創造します。これは人間の創造主=神と人間の関係に重なります。完全な神は不完全な人間の創造物をグロテスクと見ます。聖書の「ノアの大洪水」や「ソドムとゴモラ」や「バベルの塔」において、神が人間を滅ぼそうとする原因は、そうした神と人間の齟齬にあると解釈できます。

 

また、ドイツ系俳優が演じるエイリアンの創造主は、ワーグナーの楽曲を好みます。これによって彼はナチスのイメージを纏い、その創造物のグロテスクはナチスの異形な狂気と重なります。ナチスがその「崇高な理念」に基づいて行った数々の行いはグロテスクです。しかし、大衆の熱狂的な支持によって生まれたナチスは民意を反映しており、ナチスのグロテスクな行いも不完全な人間の創造物なのです。

 

このように本作は理屈っぽい深読みができます。それでも難解な作品だと怖気付くことはありません。リドリー・スコット監督らしいスモークがかった映像美、エイリアンのスピーディーかつリアルな動き、サスペンスを煽る演出などによって娯楽作品としても上出来な仕上がりになっていますから。

 

★★★★☆(2021年4月5日(月)DVD鑑賞)

 

 

 

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