【映画評】陸軍残虐物語 | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

どうも。選択的夫婦別姓制度に反対の意思を示した丸川珠代五輪担当大臣が、本名の大塚珠代を名乗らず、旧姓の丸川を使用している矛盾。

 

それはさておき、映画の感想文を書きます。今回は『陸軍残虐物語』です。

 

昭和19年、上官を殺して脱走した犬丸二等兵がいたのは帝国陸軍の異常な世界だった。1963年公開作品。監督は佐藤純彌で、出演は三國連太郎、中村嘉津雄、江原真二郎、西村晃、岩崎加根子、沢村貞子、加藤嘉。

 

佐藤純彌の監督デビュー作である戦記物です。佐藤監督の原点であり、軍隊内の理不尽な体罰は『男たちの大和 YAMATO』でも、主人公が逃亡するのは『桜田門外ノ変』でも描かれています。

 

上掲のDVDジャケットで頭から味噌汁をかけられている犬丸二等兵役を演じるのは、三國連太郎です。大きな体で気が優しい田舎者を演じます。その味噌汁をかけたのは、同じジャケットで恐ろしい形相をしている亀岡軍曹役の西村晃です。物資を横領し、実家が裕福な矢崎二等兵(江原真二郎)を依怙贔屓し、犬丸の妻ウメ(岩崎加根子)をレイプするクソ野郎な上官を演じます。

 

今だったらパワハラ案件になる陸軍内の理不尽な体罰、しごきは本当にあったのでしょう。脚本の棚田吾郎、出演者の三國と西村、更に脚本をチェックした東映撮影所所長(当時)の岡田茂が軍隊経験者なので、丸っきり嘘や出鱈目ではないはずです。

 

公開当時、上映反対の抗議をしに来た右翼に対し、岡田は軍隊経験者として反論しました。当時の右翼にも軍隊経験者はいたはずですが、それでも岡田は簡単に屈せず、上映中止にしませんでした(結果として続編を作らないということで手打ちになりました)。当時の右翼と違い、今時の自称愛国者、いわゆるネトウヨが本作を観て、これを嘘や出鱈目だと言って非難しても少しの説得力もありません。軍隊のリアルを体験せず、ネット上のデマ情報だけで頭がいっぱいになったネトウヨが日本の戦争を語るのは、ネット上のエロサイトだけ見てテクニシャンになったつもりの童貞がセックスを語るのと同じです。恥を知っている大人ならば、とっとと退場した方がいいですよ。

 

犬丸、亀岡、そして犬丸の面倒を見ていた鈴木一等兵(中村嘉津雄)の結末は、救いのないバッドエンドです。現実の戦争がバッドエンドに終わったので、当然の結末です。この救いのなさ、西村の鬼気迫る演技から、本作を日本版『フルメタル・ジャケットと呼びたいです。同作で描かれたベトナム戦争もアメリカにとってバッドエンドでしたから。

 

本作で描かれた帝国陸軍の組織的体質は、戦後の体育会系パワハラ男社会に継承されています。学校の部活、ブラックな職場などで理不尽なパワハラが横行してきました。まだパワハラ気質が抜けていない連中に対して、「負け戦になった軍隊の真似事して勝てるわけ無いんだよ、バーカ!」と言ってやりたい衝動が生まれる本作なのです。

 

★★★★★(2021年2月12日(金)DVD鑑賞)

 

 

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