どうも。新型コロナウィルスに立ち向かう強い心というのは、「コロナなんて怖くないぞ!」と言って外出も会食も控えない似非マッチョイズムではなく、事態が沈静化するまで外出も会食も控える忍耐力のことです。
それはさておき、映画の感想文を書きます。今回は『蔵の中』です。
蔵の中に住む胸を病む姉と、彼女を慕い看病する弟の妖しい関係を描く(映画.comより引用)。1981年公開作品。監督は高林陽一で、出演は山中康仁、松原留美子、中尾彬、吉行和子。
横溝正史の小説を原作とする角川映画です。1976年に市川崑監督の『犬神家の一族』がヒットしたことから、(角川春樹の)角川映画は始まりました。1981年に篠田正浩監督の『悪霊島』と本作が同時公開されたことから、角川の「『犬神家の一族』の夢よ、もう一度!」という願いを感じてしまいます。
姉の小雪役を演じる松原留美子は男性で、元祖ニューハーフと称されています。しかし、松原は女性ホルモンを投薬したり、豊胸手術などの肉体改造をしたりしなかったので、ニューハーフというより女装家(女装子、男の娘)が適切な気がします。
小雪は聾啞者という設定になっています。そのため、弟の笛二(山中康仁)が小雪の声を台詞で代弁しています。それは、まるで笛二が腹話術師で、小雪が人形であるかのような関係です(すなわち人形の声も腹話術師の声であり、両者は……)。
本作の物語は、笛二が自作の小説を雑誌編集者の磯貝(中尾彬)に持ち込むところから動き出します。そこからの場面は小説を読んでいる磯貝の脳内世界なので、現実離れした幻想的演出が可能になります。それによって、横溝作品ならではの妖しさが強調されています。
磯貝は小説の中に登場する自分の行いが事実と異なることに憤慨し、笛二の家を訪ねます。そこで磯貝は驚くべき真実を知ってしまいます。磯貝だけでなく、映画の世界に引き込まれた観客も、どんでん返しを味わいます。この謎解き感覚があるから、本作はミステリー映画なのです。
★★★☆☆(2021年1月4日(月)DVD鑑賞)
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