【映画評】この自由な世界で | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

どうも。大雪の中、近場のコンビニに行ったら、男性店員が屋内でレジ、女性店員が屋外で雪かきをしていました。「逆じゃね?」と思いましたが、それは「男=力仕事」という固定観念に囚われ、女を非力と卑下していることになります。ちょっと反省しました。

 

それはさておき、映画の感想文を書きます。今回は『この自由な世界で』です。

 

ロンドンに暮らすシングルマザーのアンジーは、働いていた職業紹介所を理不尽な理由でクビになり、ルームメイトと自分達の職業紹介所を立ち上げる。やがて、不法移民を働かせる方が儲けになることを知ったアンジーは、越えてはいけない一線を越えてしまい……(映画.comより引用)。2008年日本公開作品。監督はケン・ローチで、出演はキルストン・ウェアリング、ジュリエット・エリス、レズワフ・ジュリック、ジョー・シフリート、コリン・コフリン、マギー・ハッセー。

 

ケン・ローチ監督の社会派作品です。タイトルに「自由な世界」とありますが、本作で描かれているのは不自由な世界です。

 

アンジー(キルストン・ウェアリング)は勤めていた職業紹介所を解雇されます。何かと理由を付けられますが、実際は飲み会で上司のおっさんが尻を撫で回すセクハラ行為に出たことに立腹し、上司の顔に水をかけたからです。男社会で生きる女の不自由が描かれています。

 

アンジーはローズ(ジュリエット・エリス)と組んで、外国人労働者対象の人材派遣ビジネスを起業します。資金が乏しい状態での起業でも、自由を求めるアンジーは意地になって頑張ります。しかし、自転車操業なので事は順調に進みません。

 

派遣先の倒産による小切手不渡りで、アンジーは労働者たちに賃金を支払えなくなります。それによって恨みを買ったアンジーは、自分だけでなく、愛する息子も危険な目に遭わせてしまいます。外国人労働者は働いて豊かになる自由を求め、イギリスまで渡航してきたにもかかわらず、それを潰されたのですから恨むでしょう。

 

アンジーのビジネスは行き詰まります。そして、パスポートを偽造したり、就労ビザが無い外国人を働かせたりする違法なビジネスに足を踏み入れていきます。その酷さに相棒のローズはアンジーと別れます。

 

自由を求めてビジネスを始めたアンジーは、ブラック企業に堕ちるまで不自由にぶつかります。その不自由を生む社会のシステムとは何か。新自由主義の「自由」とは名ばかりで、本当は不自由ではないのか。ローチ監督のアプローチは、そこまで及んでいるのです。

 

★★★☆☆(2020年12月25日(金)DVD鑑賞)

 

 

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