どうも。「政治家なんて誰がなっても同じ」と賢ぶっていた冷笑者は、バカを政治家に選ぶと(コロナで)人が死ぬという現実を突き付けられています。
それはさておき、映画の感想文を書きます。今回は『股旅』です。
故郷を捨て、渡世人になろうとする若者三人が底辺でもがく様を描く時代劇。1973年公開作品。監督は市川崑で、出演は小倉一郎、尾藤イサオ、萩原健一、井上れい子、常田富士男、加藤嘉、大宮敏充。
既に一流監督であった市川崑がATG(アート・シアター・ギルド)の低予算映画を撮りました。音楽の世界で言えば、メジャーでヒットを飛ばしたアーティストがインディーズでリリースするようなものです。
本作は当時の市川が演出していたテレビドラマ『木枯し紋次郎』の延長線上にある股旅物です。そして大手映画会社では難しそうなほど、リアリティーを徹底して追求しています。
流れ者である三人(小倉一郎、尾藤イサオ、萩原健一)の衣装はボロボロで汚れています。夜のシーンは蠟燭明かりだけなので暗闇が多めです。殺陣は荒々しく流暢ではありません(三人は武家出身ではなく、剣術の指南を受けていないからです)。
これらは、華やかな衣装を着た役者の顔が映えるように照明を強く当て、美しく舞うような殺陣を見せる東映のスター時代劇(『旗本退屈男』など)の対極にあります。どちらが良いか悪いかではなく、どちらも認めるのが時代劇というジャンルの幅広さです。
三人は自由を求めて社会の底辺を流れていきます。こうした若者は、どの時代にも夥しいほどいます。そして夢を叶えられずに挫折する若者も夥しいほどいます。本作は普遍的な若者像を時代劇というスタイルで描いたのです。
★★★☆☆(2020年11月30日(月)DVD鑑賞)
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