【映画評】赤い橋の下のぬるい水 | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

どうも。トランプ大統領は中国を敵視するあまり、中国との文化交流事業まで廃止しようとしています。こうした異文化交流の中断は、戦時中の大日本帝国や、文化大革命時の中国もやったバカ丸出しな政策ですけどね。

 

それはさておき、映画の感想文を書きます。今回は『赤い橋の下のぬるい水』です。

 

リストラされ妻にも愛想をつかれた笹野は、ある港町にたどりつく。その町の橋のたもとで祖母とふたり和菓子をつくってひっそりと暮らすサエコには「秘密」があった。それは、男性と性的に交わらないと体内に大量の「ぬるい水」がたまり、官能の極みに達するとそれが大量に溢れ出すことだった(映画.comより引用)。2001年公開作品。監督は今村昌平で、出演は役所広司、清水美砂、中村嘉葎雄、ミッキーカーチス、矢野宣、坂本スミ子、北村有起哉、小島聖、ガダルカナル・タカ、夏八木勲、不破万作、北村和夫、倍賞美津子。

 

今村昌平監督最後の長編映画です。役所広司、清水美砂、北村和夫、倍賞美津子など今村作品常連俳優が多数出演しています。北村が演じるホームレスは、今村監督の代弁者のようです。

 

人間の欲望について描き続けてきた今村監督は、老いてもなお性欲について描きます。しかも性描写シーンには、「潮吹き」まであります。サエコ役の清水が、ブシャー!と潮を吹きます。

 

その潮吹きの勢いと水量が尋常ではないことから、本作はファンタジーだと分かります。今村作品は生々しいリアリティー追求で語られがちですが、本作や『うなぎ』にはファンタジー要素があります。

 

サエコが吹いた、ぬるい水は家の中の排水溝を通って、川へ流れ込みます。すると、川の魚たちが急に元気になります。また、笹野(役所広司)は胎児のように羊水に浮かぶ夢を見ます。これらは、水が生命の根源的なエネルギーであることを表しています。

 

水については、それだけではありません。本作の舞台となるのは、川辺や海辺です。本作は引きの画を多用し、川や海を画面に映り込ませています。川は流れ、海は波立つので、演者が動かなくても画面に動きが生まれます。

 

画面に動きを作ることは映画の基礎です。映画=活動写真であり、スチール写真にない特性は動きですから。本作の役所や『カンゾー先生』の柄本明を走らせまくったのも、画面に動きを作るためでしょう。

 

画面に動きを作れば、映画に生命が宿ります。今村監督は作品のテーマだけでなく、映画そのものの「生」にも、こだわってきたのです。

 

★★★☆☆(2020年11月19日(木)DVD鑑賞)

 

 

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