【映画評】男はつらいよ 寅次郎子守唄 | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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どうも。不都合な選挙結果に対して「不正選挙だ!」と騒ぎ出すのは、洋の東西を問わず、イデオロギーの左右を問わず、頭の弱い陰謀論者です。

 

それはさておき、映画の感想文を書きます。今回は『男はつらいよ 寅次郎子守唄』です。

 

寅さんが旅先でひょんなことから預ってしまった赤ん坊をめぐって捲き起こる騒動を描く(映画.comより引用)。1974年公開作品。監督は山田洋次で、出演は渥美清、倍賞千恵子、前田吟、春川ますみ、月亭八方、上條恒彦、太宰久雄、佐藤蛾次郎、三崎千恵子、下條正巳、笠智衆、十朱幸代。

 

「男はつらいよ」シリーズ第14作です。マドンナの木谷京子役は十朱幸代で、本作から竜造=おいちゃん役は下條正巳です。

 

京子が登場するシーンになると、ヨーロッパ的なBGMが流れます(音楽は山本直純)。明るく活動的なキャラクターの京子には、日本的なウェット感が似合わないからでしょうか。それでいてBGMが東京下町の風景とマッチしているのは、バランスの妙です。

 

本作では、タコ社長(太宰久雄)の工場で怪我をした博(前田吟)の労災、医療従事者である京子の労働環境など社会問題が、さり気なく盛り込まれています。更に京子が参加している地域青年のコーラスグループは、労働組合青年部のような雰囲気を出しています。これらから、本作が現実と無縁な世界ではなく、当時の労働者の現実と繋がった世界を描いていることが分かります。

 

テキ屋の寅次郎(渥美清)は、カタギな労働者の価値観に共感できない社会不適合者です。それでも、産みの母に捨てられた見ず知らずの赤ん坊を預かったり、京子への恋心を伝えられないコーラスグループのリーダー大川(上條恒彦)の背中を押したりと人助けをします。後者の場合、寅次郎も京子に片思いしているにもかかわらずです。

 

結局、寅次郎は失恋し、故郷である葛飾柴又を去って行きます。社会不適合者である寅次郎は、博と妹さくら(倍賞千恵子)夫婦のような市民的幸福を得られません。しかし、他人の人生に関わり、良い方向へ導く守護天使的な役割を担うことで社会に居場所を与えられています。

 

こうした寅次郎の扱いに、原作者でもある山田洋次監督の厳しさと優しさを見出すことができるのです。

 

★★★☆☆(2020年10月23日(金)DVD鑑賞)

 

 

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