どうも。難病である潰瘍性大腸炎を患っている割には、毎夜のように豪勢な外食をしていたような・・・・・・。
それはさておき、映画の感想文を書きます。今回は『千年女優』です。
小さな映像制作会社の社長・立花は、かつて一世を風靡した昭和の大女優・藤原千代子のドキュメンタリーを作るため、人里離れた千代子の邸宅を訪れる。30年前に突如として銀幕から姿を消し、隠遁生活を送っていた千代子は、立花が持参した1本の鍵を見て、思い出を語りはじめる。千代子の語りは、いつしか現実と映画のエピソードが渾然一体となり、波乱万丈の物語へと発展していく(映画.comより引用)。2002年公開のアニメ映画。監督は今敏で、声の出演は荘司美代子、小山茉美、折笠富美子、飯塚昭三、小野坂昌也、山寺宏一、津嘉山正種。
本作は、老いた千代子(声:荘司美代子)が語るストーリーを映像化する形になっています。これは、ローズ婆ちゃんが語るストーリーを映像化した『タイタニック』と同じ形です。
本作では、立花(声:飯塚昭三)らが千代子にインタビューしている現在の現実世界、千代子の過去の記憶、映画の虚構世界を混在させて、ストーリーが進んでいきます。千代子の記憶には昭和史が、映画の世界には日本映画史が反映されています。
特に千代子が出演してきた映画には、実際に元ネタとなった作品があり、千代子のエピソードにも、実際にモデルとなった女優がいます。日本映画マニアならば、それぞれを推理することによってニヤニヤできます。
三つの世界の場面転換はスムーズに行われます。これはアニメ映画だからこその利点であり、実写映画でやると(CG技術を駆使しても)安っぽくなるでしょう。
千代子は、若い頃に出演した時代劇(元ネタは『蜘蛛巣城』?)で会った妖婆によって「映画の呪縛」に囚われます。妖婆の回す糸車は映写機のメタファーであり、妖婆は映画の化身です。妖婆=映画の魔力が三つの世界を混在させる原因となっています。
ところが、後に妖婆は千代子自身であると明らかになります。鏡に映った妖婆の姿が千代子に変わるからです。映画の呪縛とは千代子が自分自身にかけたものであり、千代子は現実と虚構が混在した世界を生きる「映画女優」になったのです。
映画女優になった千代子にとっては、現実も記憶も虚構も全て幻であり、自らが追求する愛だけが真実です。この愛は少女時代の千代子に鍵を渡した男(声:山寺宏一)に向けられているようでいて、そうではありません。この男の存在も幻であり、単なる仮の目標です。千代子の愛は、もっと根源的な人間の欲望に近いものです。
こうした深みのあるテーマを退屈させないエンターテインメントで表現した本作は、日本アニメのレベルの高さを表しています(もはやアニメか実写かという区別は無意味なのかもしれませんが)。
★★★★☆(2020年8月18日(火)DVD鑑賞)
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