映画「無頼」シリーズや、刑事ドラマ「西部警察」などで知られる俳優渡哲也(わたり・てつや)さん(本名・渡瀬道彦)が10日午後6時30分、肺炎のため亡くなったことが分かった。78歳。石原裕次郎さんにあこがれて映画界入りし日活で活躍。その後、石原プロモーション入りした。裕次郎さんが亡くなった後は同プロの社長を務め、現在は相談取締役。直腸がん、大腸がんを患い、15年には急性心筋梗塞で手術を受けた。近年は肺気腫、呼吸器疾患からの回復を目指してリハビリ中だった。放送中の宝酒造「松竹梅」のCMが最後の仕事となった。歌手としても活躍、「くちなしの花」などヒット曲も多数。弟は17年に亡くなった俳優渡瀬恒彦さん(日刊スポーツより引用)。
最近では、長年守り続けてきた「石原軍団」を解散させる決意をした渡さん。期せずして「終活」のような形になってしまいました。
渡さんの出演作のうち、私が推すのは深作欣二監督と組んだ『仁義の墓場』です。実在したアウトロー石川力夫の無軌道な生き様を描いた東映ヤクザ映画です。後にリメイクされた三池崇史監督&岸谷五朗主演の『新・仁義の墓場』は、オリジナルである本作には及びません。
本作がヤクザ映画として異質なのは、石川が抗う相手が世話になった親分や兄弟分である点です。深作監督の『仁義なき戦い』シリーズは、義理人情を重んじる旧来の任侠映画における価値観を破壊しましたが、本作はその方向性を極限にまで高めたものです。
当時NHK大河ドラマ『勝海舟』を病気で途中降板し、長い入院生活を経た渡さんは本作を復帰第一作としました。その意気込みが鬼気迫る狂気の演技となり、本作は後年に高く評価されています。その代償として、過密な撮影スケジュールで体調を崩した渡さんは再び入院することになりました。本作は文字どおり渡さんが全身全霊を尽くした代表作と言えます。
本作において義理人情を無視して暴走するヤクザを演じた渡さんが、現実において尊敬する石原さんが遺した「石原軍団」を守り続けた事実は興味深いです。渡さんは一流の役者だったということです。渡さんを偲んで本作を観てはいかがでしょうか。
渡さんのご冥福をお祈りします。
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