【映画評】壇の浦夜枕合戦記 | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

どうも。東京都の新型コロナウィルス感染者が1日100人台を突破しても、「東京アラートの効果はあったのか?」と責任追及することなく、都民は小池百合子を都知事に選ぶでしょう。都民なんて、そんなものです。一時期、私も都民だったので分かります。

 

それはさておき、映画の感想文を書きます。今回は『壇の浦夜枕合戦記』です。

 

源平合戦が終わり、囚われの身となった建礼門院徳子を源義経が口説こうとする。1977年公開の日活ロマンポルノ作品。監督は神代辰巳で、出演は渡辺とく子、風間杜夫、中島葵、花柳幻舟、山科ゆり、高橋明、丹古母鬼馬二、三谷昇、小松方正、宮下順子。

 

日活ロマンポルノでありながら、時代劇ということで衣装やセットに金をかけているのが分かります。主演者も風間杜夫、丹古母鬼馬二、三谷昇、小松方正と一般映画にも出演するメジャーな顔ぶれが揃っています(当時、まだ風間はメジャーではありませんが)。

 

神代辰巳監督らしく、全編が音楽に満ちています。序盤は『平家物語』をイメージして、琵琶演奏で格調高い雰囲気を出しています。しかし、ストーリーが進むに連れて、猥歌を挿入する悪ふざけをしてきます。これこそが神代監督流です。

 

囚われた平家の女官たちが源氏の武者たちに凌辱される乱交シーンや、抵抗した女官の耳を削ぐ残酷描写があるのは、ピエル・パオロ・パゾリーニ監督のソドムの市』の影響でしょうか。同作の公開は、本作公開の前年ですから。

 

『ソドムの市』が第二次世界大戦下のファシズムによる抑圧を描いているのに対し、本作は源平合戦の体裁を装いながら、終戦直後の日本の解放を描いていると思われます。日本を平家に、アメリカを源氏に見立てれば、源平合戦という「大きな戦」が終わり、平家の女官たちが娼婦=パンパンにされるのも、徳子(渡辺とく子)に義経(風間)が性の悦び=自由を教えるのも、闇市があった頃の戦後日本の隠喩です。

 

更に深読みすると、驕る平清盛(小松方正)が横暴を極める様は、戦前・戦中日本の加害者性を描いています。また、天皇家に嫁いで安徳天皇を産んだ徳子を皇室の象徴とすれば、徳子が性の悦びを知るのは昭和天皇の人間宣言の隠喩になります。

 

このように見れば、本作は単なる娯楽作品ではなく、政治的・社会的な色合いを帯びてくるのです。

 

★★★☆☆(2020年6月24日(水)インターネット配信動画で鑑賞)

 

 

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