どうも。自粛警察なんて呼び方をするから、我に正義ありと調子に乗るのです。やっているのは脅迫と器物損壊ですから、あのバカどもは自粛ヤクザや自粛チンピラと呼んでやるのがお似合いです。
それはさておき、映画の感想文を書きます。今回は『森繁の新入社員』です。
保険会社の新入社員である豊臣三太郎が、あの手この手で保険勧誘に奮闘し、出世と恋愛を成就させるミュージカル・コメディ。1955年公開作品。監督は渡辺邦男で、出演は森繁久彌、杉葉子、高島忠夫、新倉美子、清川虹子、坊屋三郎、横山エンタツ、柳家金語楼。
新東宝の森繁久彌主演作品です。本作と同年に『夫婦善哉』で好演した森繁は、当時42歳です。戦後、満州から引き揚げてきた時点で既に三十路だった森繁は、タモリやビートたけしと同様、遅咲きでブレイクしたと言えます。
本作は劇中で森繁が突然歌い踊る、いわゆる和製ミュージカル・スタイルです。これは植木等主演の『ニッポン無責任時代』に引き継がれています。これらの作品を観ると、長らく日本で国産ミュージカル映画がヒットしないのは国民性がどうとかではなく、演出家と演者の能力が問題なのではないかと思えてきます。
本作では、時々森繁がスクリーン越しで観客に向かって話しかけてきます。近年の『デッドプール』と同じ手法です。また一人二役で森繁が森繁本人を演じ、保険契約を断られた豊臣(森繁)が怒って「あいつ(森繁)の出てる映画なんて観ねえぞ!」と言うシーンがあります。どちらもメタ映画的なお遊びです。
豊臣が仕事で成功を収め、恋人の北条サマ子(杉葉子)と結婚するところで、皆が踊ってハッピーエンドになるかと思っていたら、その続きがあります。二人の結婚生活は所帯じみて、豊臣はやけになってホステス相手に散財して遊びます。夜遅くに帰宅した豊臣が身籠った妻を前にして我に返り、小さな幸福を感じたところで本当のエンディングになります。これはコクのある終わり方です(本作の脚本は、あの川内康範です)。
★★★☆☆(2020年5月11日(月)DVD鑑賞)
にほんブログ村 映画評論・レビューに参加しています(よろしければクリックを!)