どうも。感染者の住宅に投石したり、県外ナンバーの車を傷つけたりする未開の蛮族がいる国で、たった1年後に世界各国からお客様を招いてオリンピックを開催するのは無理でしょう。
それはさておき、映画の感想文を書きます。今回は『ドクター・ストレンジ』です。
天才的な技術を誇るが傲慢な性格だけが欠点の神経外科医スティーブン・ストレンジは、不慮の事故で両手の機能を失い、築いてきたキャリアの全てが崩壊する。手の治療と失われた人生を取り戻すため、あらゆる手段を模索するストレンジは、やがて神秘に満ちた魔術の力へとたどり着く。魔術の修行に励むストレンジは、強大な敵との戦いに巻き込まれていき、医師として相手を傷つけることに苦悩し、外科医に戻るか最強の魔術師として戦う道に進むかの選択を迫られる(映画.comより引用)。2017年日本公開作品。監督はスコット・デリクソンで、出演はベネディクト・カンバーバッチ、キウェテル・イジョフォー、レイチェル・マクアダムス、ベネディクト・ウォン、マイケル・スタールバーグ、ベンジャミン・ブラット、スコット・アドキンス、マッツ・ミケルセン、ティルダ・スウィントン。
マーヴェルコミック原作のヒーローを実写化した作品です。劇中の台詞ではアベンジャーズに言及し、エンドロールのおまけ映像ではアベンジャーズの一員が登場します。
マーヴェルコミックのヒーローの多くが科学的・物理的な力で戦うのに対し、魔術師であるドクター・ストレンジ(ベネディクト・カンバーバッチ)は非科学的・精神的な力で戦います。似たような力で戦う「神様」がアベンジャーズにいますね。
本作はビジュアルが見所です。医者であるストレンジが魔法の力を体感し、傲慢な態度を改めるシーンはトリップ映像のようです。また戦闘シーンで道路や建造物が変形するVFXは『インセプション』の進化形であり、高度なパズルを見ているようです。そしてクライマックスでストレンジが時間を操って戦うのは、『ジョジョの奇妙な冒険』第3部のディオ戦を実写化したかのようです。
監督のスコット・デリクソンはSFやホラーを手掛けてきたので、本作に適しています。監督デビュー作の『エミリー・ローズ』は、悪魔祓いによる死亡事故の裁判を描いており、オカルト的事象を理性的な言葉で語る試みがなされていました。その試みは本作で活かされています。
本作のようにオカルトを科学的に語るのは、フィクションだから許されることです。現実でオカルトを科学的に語る輩は、もれなくインチキ詐欺師です。オウム真理教が理系出身者を重用したり、幸福の科学がオカルトのくせに「科学」を名乗ったりするのが実例です。
ストレンジが属する魔術師集団は、多様な人種や民族で構成されています。モルド(キウェテル・イジョフォー)は黒人、ウォン(ベネディクト・ウォン)は中華系、エンシェント・ワン(ティルダ・スウィントン)はケルト人という設定です。彼らが東洋風の衣装を着ていると、『スター・ウォーズ』シリーズにおけるジェダイの騎士を思い出します。
その設定は、わざわざ原作を変更しています。原作のモルドは黒人ではありませんから。それは近年のダイバーシティ社会を考慮した変更と考えられると共に、「魔法使いは白人」という先入観を壊すものです。そして、その先入観を壊す姿勢は、ストレンジが常識に凝り固まった傲慢さを改め、新しい世界で生きていく決意をする話の流れに重なるのです。
★★★☆☆(2020年4月20日(月)DVD鑑賞)
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