【映画評】遥かなる大地へ | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

どうも。「コロナに勝つ」や「コロナに負けるな」ではなく、「コロナを避けよう」や「コロナから逃げよう」が正しいです。勝ち負けに拘るから、頭の悪い非科学的な精神論や根性論が幅を利かせます。自分や家族を守るためなら、コロナを知り、コロナに怯え、コロナから身を隠すのが最適の方法です。

 

それはさておき、映画の感想文を書きます。今回は『遥かなる大地へ』です。

 

19世紀、アイルランドよりアメリカへと渡った若い男女の闘いを描いた人間ドラマ(映画.comより引用)。1992年日本公開作品。監督はロン・ハワードで、出演はトム・クルーズ、ニコール・キッドマン、トーマス・ギブソン、ロバート・プロスキー、バーバラ・バブコック、コルム・ミーニイ。

 

トム・クルーズとニコール・キッドマンが夫婦だった頃の共演作です。二人の共演作は『デイズ・オブ・サンダー』、本作、『アイズ・ワイド・シャット』の3本です。これを多いと取るか、少ないと取るかは判断が付きません。

 

監督のロン・ハワードは、映画賞狙いの『ビューティフル・マインド』もヒット狙いの『ダ・ヴィンチ・コード』も成功させる確かな実力を持っています。人間ドラマもさることながら、70ミリフィルムで撮影された大画面による、終盤の騎馬レースシーンも迫力満点の出来です。

 

貧困層のジョセフ(トム・クルーズ)と富裕層のシャノン(ニコール・キッドマン)が渡米するというストーリーは、タイタニック』と同じです。時代設定は本作が先で、ジョセフとシャノンは二人揃ってアメリカ上陸できた点で異なりますけど。

 

本作も『タイタニック』も劇中でケルト音楽を使用しています。ケルト音楽はアイルランド音楽でもあり、本作にはアイリッシュ(アイルランド系移民)をルーツに持つハワード監督の思いが詰まっています(ついでに言えば、ジョセフとシャノンが自由と土地を求めて目指すオクラホマは、ハワード監督の出身地です)。

 

アメリカに渡って無一文になったジョセフは、ボクシングに才覚を見出し、拳で金を稼ぎます。これは実在したアイリッシュのボクサーであるジェームズ・J・ブラドックを描いた『シンデレラマン』に通じるものがあります。

 

アイリッシュのジョセフとシャノンは肉体労働、悪く言えば底辺の仕事にしか就けません。ジョセフが大一番で闘う相手はイタリアン(イタリア系移民)であり、当時のアイリッシュとイタリアンは社会的地位が低かったことを表しています(かつてのイタリアンが底辺の仕事にしか就けないのは、『ゴッドファーザーPARTⅡ』で描かれています)。

 

アイリッシュの低い社会的地位については、現代でも残っています。『バックドラフト』では、消防士という危険な仕事に従事するアイリッシュの兄弟が主人公です。ハワード監督は本作、『シンデレラマン』、『バックドラフト』でアメリカ史におけるアイリッシュを描きました(公開順は『バックドラフト』、本作、『シンデレラマン』ですが)。

 

ジョセフとシャノンが渡米した頃は、アイリッシュであるジョン・F・ケネディの曽祖父が渡米した頃と同時代です。ケネディの祖父は港湾労働者なので、底辺の仕事に就いていたジョセフの姿と重なります。ケネディがアメリカ大統領に就任すると、アメリカンドリームの体現者であるかのように大衆に支持されたのは、アイリッシュの苦難の歴史が周知の事実だったからでしょう。本作はアメリカの歴史や社会的背景を知る一助となり得るのです。

 

★★★★☆(2020年4月11日(土)DVD鑑賞)

 

 

にほんブログ村 映画評論・レビューに参加しています(よろしければクリックを!)