どうも。絆という言葉は、動物を繋ぎとめる綱のことを指します。だから、飼主と家畜のような縦の主従関係に用いる言葉であり、平等な者同士の横の連帯関係に用いるのは適当ではありません。確かに、ヤクザ(親分と子分)やヤンキー(先輩と後輩)のような上下関係に厳しい人たちが、絆という言葉を好んで用いますね。
それはさておき、映画の感想文を書きます。今回は『眠狂四郎円月斬り』です。
ニヒルな凄腕の剣客、眠狂四郎が貧民をいたぶる武家階級を斬る時代劇。1964年公開作品。監督は安田公義で、出演は市川雷蔵、東京子、丸井太郎、浜田ゆう子、成田純一郎、植村謙二郎、伊達三郎、若杉曜子、月宮於登女。
市川雷蔵が眠狂四郎役を演じる人気シリーズ第3作です。私が無知なのか、雷蔵以外にスター俳優を配役していないような気がします。
今回の悪役は、将軍徳川家斉の世継ぎである片桐高之(成田純一郎)です。片桐は、家斉の妾だった母松女(月宮於登女)の間違った子育てによって、上っ面だけ武士らしい虚勢を張る偽マッチョ馬鹿ボンボンになりました。これに近いタイプは、現代の「上級国民」にもいそうです。
片桐が貧民の一人を虫けらのように試し斬りしたことから、物語は始まります。殺人現場を通りすがった狂四郎は、貧民たちに犯人の疑いをかけられますが、その誤解は直ぐに解けます。その縁で狂四郎は貧民たちに代わって恨みを晴らすべく、一匹の蟻が巨象を倒すような無理を承知で策を弄します。
狂四郎のやり方は決して清廉ではなく、片桐の婚約者である小波(東京子)を犯すという汚い手も使います。狂四郎は子供向けの漫画的ヒーローではなく、大人向けの劇画的ダーティーヒーローです。当時の大映は、雷蔵の狂四郎と勝新太郎の座頭市が時代劇2トップであり、大人の娯楽を提供していたのです。
何度も危機に陥りながらも、それらをクールに脱した狂四郎は、単身で大勢を率いた片桐との対決に臨みます。その結末で魑魅魍魎が蠢く武家政治の闇を見せる本作は、やはり大人の娯楽なのです。
★★★☆☆(2020年4月3日(金)DVD鑑賞)
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