【映画評】渇き。 | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

どうも。布マスク2枚配布という国民をバカにして精神を逆なでするかのような愚策に対し、政府=安倍晋三に感謝しろという擁護派(信者?)がいます。これは、バカ亭主の暴力を愛だと思い込んで受け入れるドメスティック・バイオレンス(DV)被害者と似た心理ですね。早く目を覚まさないと、一度きりの人生を台無しにしますよ。

 

それはさておき、映画の感想文を書きます。今回は『渇き。』です。

 

妻の不倫相手に暴行を加えて仕事も家庭も失った元刑事の藤島昭和は、別れた元妻の桐子から娘の加奈子が失踪したと知らされ、その行方を追う。容姿端麗な優等生で、学校ではマドンナ的存在のはずの加奈子だったが、その交友関係をたどるうちに、これまで知らなかった人物像が次々と浮かび上がってくる。娘の本当の姿を知れば知るほどに、昭和は激情に駆られ、次第に暴走。その行く先々は血で彩られていく(映画.comより引用)。2014年公開作品。監督は中島哲也で、出演は役所広司、小松菜奈、妻夫木聡、清水尋也、二階堂ふみ、橋本愛、森川葵、高杉真宙、國村隼、黒沢あすか、青木崇高、オダギリジョー、中谷美紀。

 

下妻物語』や『嫌われ松子の一生』で知られる中島哲也が監督した猛毒ミステリーです。本作でも、ポップな映像感覚と毒気の強いドラマをマッチさせる彼の流儀は貫かれています。

 

パコと魔法の絵本』の役所広司が主人公の藤島役を演じ、その他の配役にも中島作品出演済みの俳優が多くいます。その中で、藤島の娘である加奈子役を演じる小松菜奈は、ほぼ新人でありながら、主役級のポジションにいます。清純そうな表の顔と、最高に狂っていて残酷な裏の顔を小悪魔的に演じています。小松のクールな顔立ちは内面を読みにくいので、如何様な色にも染まることができるというのが強みです。

 

ほとんどの登場人物は、クセが凄いキャラクターです。まともな人間が極めて少数派です。多数派のまともではない人間が行動するので、暴力描写とグロ描写だらけの映画になっています。よくR-15指定に止まったものです。

 

本作において、時系列の交錯はクエンティン・タランティーノ風で、派手な暴力描写はロバート・ロドリゲス風であり、人が狂っていく描写はダーレン・アロノフスキー風です。これらの映像パッチワークに目を奪われますが、ストーリーの核になっているのは、ロマン・ポランスキー監督の『チャイナタウン』だと思われます。どちらも元警官の探偵が傷を負いながら事件の闇に迫っていく流れだからです。ハードボイルド物は大概そのパターンですが、近親相姦という要素(本作では雰囲気だけ)があるので、『チャイナタウン』に近いのです。

 

加奈子は、その清純そうな魅力で周囲の人間を裏の世界に引き込みます。それはクソな大人たちが作った、法も道徳もない無責任な世界です。その世界で人生を狂わされる他人を見ても、加奈子は何ら良心の呵責を感じません。それは、加奈子が中身の空虚な「人形」であり、裏の世界を体現しているに過ぎないからです。

 

その加奈子の父親である藤島は、家庭を崩壊させ、精神を病んだクズ野郎です。しかし、父親として娘の悪行に決着を付けようと、傷だらけになりながらも事件の深層を探っていきます。それは自分も含めたクソな大人たちの責任を取るためなのです。

 

★★★★☆(2020年3月20日(金)DVD鑑賞)

 

 

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