どうも。A「布マスクより現金を給付しろ」という批判にB「金をくれなんて乞食か」と揶揄したところ、CがBに「じゃあ、お前の次の給料は布マスクでいいな」というSNS上のやり取り。よくできた漫才です。
それはさておき、映画の感想文を書きます。今回は『不良少女 野良猫の性春』です。
上京した田舎娘が、都会のハゲ鷹たちに弄ばれながらも、そのバイタリティで力強く生きていく姿を描く(映画.comより引用)。1973年公開の日活ロマンポルノ作品。監督は曽根中生で、出演は片桐夕子、江角英明、大山節子、小森道子、三都徹、沢田情児、影山英俊、高橋明、木夏衛。
上京した鳩子(片桐夕子)と、彼女を騙したゴマメ(江角英明)が共に大阪弁を話します。気丈な女とダメ男が大阪弁でやり取りする様は、物語の舞台が東京の新宿辺りであっても、『夫婦善哉』のようにも見えてきます。作品の気品みたいなものは全く違いますけど。
都会の男たちの食い物にされる鳩子ですが、逆境を物ともせずに逞しく生きています。その反面、ゴマメとその仲間たち、ゴマメが借金をしているヤクザたちは間抜けで情けなく描かれています。結果として表面的な被虐と加虐の関係が逆転し、鳩子が輝くことになります。このように重層的なドラマ作りが、往年のロマンポルノと最近のアダルトビデオの決定的な違いです。
男の見かけと裏腹な馬鹿や弱さをコミカルに描くのは、本作と同じ曽根中生監督の『嗚呼!!花の応援団』に通じるものがあります。そこには、弱さを隠すために虚勢を張るマッチョイズム(マチズモ)への反発が見えてきます。
本作は1973年公開で、当時の東京がフィルムに焼き付けられています。上京したての鳩子を騙そうとする男は、鳩子に回転寿司を御馳走します。回転寿司は1970年の大阪万博に出店してからブームが到来したそうです。それなら本作公開時の回転寿司は流行りのグルメということになります(昨年におけるタピオカドリンクみたいなものです)。
また、ゴマメの借金のカタとしてヤクザに売り飛ばされた鳩子は、そこから逃げ延びて劇団に拾われます。その劇団は、突然路上に半裸の女たちが現れて踊り出し、白塗りの男と女が街頭で芝居を始めるというキテレツな集団です。これは、唐十郎の状況劇場や寺山修司の天井桟敷に代表される、1970年代のアングラ演劇を模したものです。
こうして見ると、本作は当時の風景のみならず、流行や文化も記録していると言えます。そして、再会した鳩子とゴマメに訪れる唐突なラストもまた前例に抗う反骨心という時代の空気を表現しているようにも受け取ることができるのです。
★★★☆☆(2020年3月10日(火)DVD鑑賞)
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