【映画評】男はつらいよ 寅次郎恋やつれ | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

どうも。1年延期したところで大会施設の維持費がかかり、出場選手の選考や調整スケジュールがやり直しになり、更に同年に開催される世界陸上の日程変更まで検討させるという他方面に迷惑かけまくりの東京五輪なんて中止した方がよくね?

 

それはさておき、映画の感想文を書きます。今回は『男はつらいよ 寅次郎恋やつれ』です。

 

車寅次郎が歌子と再会し、未亡人となった彼女を幸福にしようと奮闘する喜劇。1974年公開作品。監督は山田洋次で、出演は渥美清、倍賞千恵子、吉永小百合、松村達雄、三崎千恵子、太宰久雄、佐藤蛾次郎、前田吟、高田敏江、笠智衆、宮口精二。

 

本作はシリーズ第13作です。第9作『男はつらいよ 柴又慕情』に出演した吉永小百合が、同じ歌子役で再登場します。おそらく脚本も兼ねる山田洋次監督の脳内には、柴又の住民も過去作のマドンナも含めた全ての登場人物が生活する世界観があるのでしょう(アメコミにおけるマーヴェル・コミック・ユニヴァースみたいなものです)。だから、寅さん(渥美清)と歌子が偶然再会することもあります。

 

本作の序盤では、柴又に帰ってきた寅さんの結婚相手に会うため、妹のさくら(倍賞千恵子)とタコ社長(太宰久雄)が一緒に島根へ行くという展開があります(結局、寅さんの片思いだったので無駄足になりますが)。『男はつらいよ』シリーズは、物語の大筋が同じでも、毎回細部に変化を加えています。こうした機微に気付かず、本シリーズをマンネリと断ずるのは鈍感です。

 

寅さんと再会した歌子は、島根から東京に戻って来て職探しを始めます。この社会に出て働き、自立しようとする女性像は、吉永本人に当て書きしたものでしょう。早大卒の知性派で反戦平和活動を続ける吉永は、古風で家庭的な大和撫子ではありませんから。

 

ところが、寅さんは歌子の気持ちを理解できません。社会に出ることなく、毎日遊んで暮らすのが歌子にとって幸福だと信じます。幼稚な女性観です。また喧嘩別れしている歌子の父(宮口精二)に歌子への謝罪を要求するのは、父娘の心情を無視した余計な世話です。寅さんは大人の事情を酌むことができません

 

ガキ大将がそのまま大きくなったような精神の寅さんは、成長しない社会不適合者です。山田監督は寅さんのような存在を否定しませんが、社会の一員としての市民的幸福を享受させません。それ故、歌子は寅さんの思いに沿わない形で幸福になり、寅さんはまた一人で放浪の旅に出るのです。

 

★★★☆☆(2020年3月5日(木)DVD鑑賞)

 

 

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