【映画評】ボディ・ダブル | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

どうも。「陽性患者を隔離できる医療体制がないから検査拡大するな」という日本と、「検査拡大するから巨額の財政出動をしてでも医療体制を確保しろ」という英米。何かやろうとする場合、直ぐに「できない理由」を探すのは仕事が出来ない奴の典型です

 

それはさておき、映画の感想文を書きます。今回は『ボディ・ダブル』です。

 

俳優のジェイクはしばらく旅に出ることになったサムの部屋の留守番を請け負う。そこの望遠鏡で向かいに暮らす美女グロリアの部屋を覗き見してしまうジェイク。彼はグロリアを尾行し、その後、ふたりは結ばれることに。しかしグロリアが電気ドリルで惨殺されるという事件が。やがてジェイクは自分が罠にハメられたことに気づく……(映画.comより引用)。1985年日本公開作品。監督はブライアン・デ・パルマで、出演はクレイグ・ワッソン、メラニー・グリフィス、グレッグ・ヘンリー、デボラ・シェルトン、ガイ・ボイド、デニス・フランツ、デヴィッド・ハスケル。

 

本作は、ブライアン・デ・パルマ監督が『スカーフェイス』と『アンタッチャブル』の間に作ったので、脂がのっていた時期の作品です。

 

デ・パルマ監督は、本作をアルフレッド・ヒッチコックへのオマージュとして作っています。主人公のジェイク(クレイグ・ワッソン)が望遠鏡で殺人事件を目撃するのは『裏窓』と同じで、ジェイクが閉所恐怖症であるのは『めまい』の高所恐怖症をアレンジしたものです。ポルノ女優ホリー役のメラニー・グリフィスの実母が、『』のティッピ・ヘドレンであることに至っては、デ・パルマ監督のこだわり過ぎです。

 

本作には、ヒッチコック作品から影響を受けたデ・パルマ監督流のサスペンス演出が散りばめられています。しかし、その演出にデ・パルマ監督の意図が加わることによって、誇張し過ぎたヒッチコック演出の物真似になっている感があります。

 

例えば、殺害シーンで肌の露出を多めにしたり、鮮血の量を増やしたりしたのは、デ・パルマ監督のオリジナリティーや、映画表現の規制緩和が進んだことが理由でしょう。『サイコ』のオマージュである『殺しのドレス』の殺害シーンにも似た傾向があります。しかし、『サイコ』の殺害シーンは裸も血も規制されていた時代だからこそ工夫を凝らして名シーンとなり得たのです。デ・パルマ監督流のアレンジは過剰な蛇足になっています。何もかも規制緩和すれば良くなるというものではありません。

 

本作のタイトルであるボディ・ダブルは、「代役」を意味する映画業界用語です。ジェイクが売れない映画俳優であり、彼が主演するB級ドラキュラ映画が劇中劇としてあることからも、本作は「映画についての映画」であると言えます。そして、頼りない非マッチョなジェイクを主人公にしたのは、デ・パルマ監督が自身を投影させ、映画の世界の中にいたいという願望を満たしたかったからでしょう。本作はデ・パルマ監督の映画愛いっぱいの映画なのです。

 

★★★☆☆(2020年3月2日(月)DVD鑑賞)

 

 

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