【映画評】カツベン! | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

どうも。新型コロナウィルスの検査拡大に反対する人は、検査で陽性が出ると強制入院で医療崩壊になることを理由に挙げます。この人たちは検査を受けるだけで陽性扱いする思い込みに囚われています。検査する前には陽性か陰性か分からないのに。これは刑事事件で逮捕されただけで、まだ裁判が始まってもいないのに犯罪者扱いする思い込みと同じです。日本人独特のバカなメンタリティーです。

 

それはさておき、映画の感想文を書きます。今回は『カツベン!』です。

 

当時の人気職業であった活動弁士を夢見る俊太郎が流れ着いた小さな町の閑古鳥の鳴く映画館・靑木館。隣町にあるライバル映画館に人材も取られ、客足もまばらな靑木館にいるのは、人使いの荒い館主夫婦、傲慢で自信過剰な弁士、酔っぱらってばかりの弁士、気難しい職人気質な映写技師とクセの強い人材ばかり。雑用ばかりを任される毎日を送る俊太郎の前に、幼なじみの初恋相手、大金を狙う泥棒、泥棒とニセ活動弁士を追う警察などが現れ、俊太郎はさまざまな騒動に巻き込まれていく(映画.comより引用)。2019年公開作品。監督は周防正行で、出演は成田凌、黒島結菜、永瀬正敏、高良健吾、音尾琢真、徳井優、田口浩正、正名僕蔵、成河、森田甘路、酒井美紀、山本耕史、池松壮亮、竹中直人、渡辺えり、井上真央、小日向文世、竹野内豊。

 

周防正行監督による日本映画創成期の物語です。徳井優、田口浩正、竹中直人、渡辺えりという周防作品常連俳優が出演しています。

 

その中で主演しているのは、周防作品初参加で映画初主演でもある成田凌です。成田の演技を初めて見ましたが、彼の顔立ちは窪塚洋介に似ていますね。萩原聖人→窪塚→成田という系譜を勝手に作り、成田も私生活ではアウトローな気質なのかと想像してしまいます。

 

劇中の無声映画で、エンドロールに映る『雄呂血』以外は本作のために作ったオリジナル作品です。それにシャーロット・ケイト・フォックス、上白石萌音、城田優、草刈民代を出演させているのだから、実に手が込んでいます。

 

本作のような「映画を題材にした映画」は数多く作られています。洋画では『雨に唄えば』、『ニュー・シネマ・パラダイス』、『アーティスト』、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』など、邦画では『蒲田行進曲』、『キネマの天地』、『キツツキと雨』、『カメラを止めるな!』などです。映画人にとって自分の業界のことだから、思い入れが強いのが理由でしょう。

 

前記のうち、『雨に唄えば』と『アーティスト』がサイレントからトーキーへの転換期を描いています。本作では、永瀬正敏演じる活動弁士がサイレント映画の盛衰を体現するかのような役割になっています。

 

本作はラブストーリー、コメディ、アクションの要素が詰まった上質のエンターテインメントに仕上がっています。しかし、どうしても不満な点があります。成河演じる映写技師がフィルムの切れ端を無断で蒐集していることです。『ニュー・シネマ・パラダイス』が元ネタであり、本作では、それを利用することによって映画館の危機が救われるとしても、映画愛があるならば許されない行為です。

 

何故なら作品のオリジナル性を損なうからです。戦前の貴重な映画フィルムが奇跡的に発見された場合、公開時の記録より上映時間が短いことがあります。それは映写技師が無断でカットして編集したからです。何らかの事情でカットした切れ端は手元に残さず、フィルムに添付して返却するのがルールですが、それを守らない映写技師がいたということです。そのせいで作り手の思いが完全に伝わらない、不完全な作品が後世に遺されてしまいます。

 

このように少し映画愛を間違えているのではないかと思われるのが、本作に満点を付けられない理由なのです。

 

★★★★☆(2020年2月24日(月)秋田県・北秋田市文化会館ファルコンで鑑賞)

 

 

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