どうも。日本の観光地から中国人や韓国人の観光客がいなくなり、「これで本当の美しい日本に戻った」と喜ぶ嫌中嫌韓ネトウヨがいます。こいつらは観光業者の致命的な売上減まで頭が回っていません。自国民が滅ぶのを喜ぶことができるのは似非愛国者です。
それはさておき、映画の感想文を書きます。今回は『キングコング 髑髏島の巨神』です。
神話の中だけの存在とされてきた髑髏島が実在することが判明し、未知の生物の探索を目的とする調査遠征隊が派遣される。島内に足を踏み入れた隊員たちは、あちこちに散らばる骸骨や、岩壁に残された巨大な手跡を発見する。やがて彼らの前に、神なる存在である巨大なコングが出現。隊員たちは為す術もなく、凶暴な巨大生物から逃げ惑うが……(映画.comより引用)。2017年日本公開作品。監督はジョーダン・ボート=ロバーツで、出演はトム・ヒドルストン、サミュエル・L・ジャクソン、ジョン・グッドマン、ブリー・ラーソン、ジン・ティエン、トビー・ケベル、ジョン・オーティス、コーリー・ホーキンス、ジェイソン・ミッチェル、シェー・ウィガム、トーマス・マン、テリー・ノタリー、MIYAVI、ジョン・C・ライリー。
大きなゴリラのコングが本作の主役であるのは勿論のことです。しかし、人間側のキャスティングにも手抜きはありません。サミュエル・L・ジャクソン、ジョン・グッドマン、ジョン・C・ライリーというおじさん俳優たちが好演しています。いわゆるフケ専趣味の方々は満足できるでしょう。
太平洋戦争中、洋上の孤島である髑髏島に不時着した、アメリカ兵マーロウと日本兵イカリがコングと遭遇するエピソードから物語が始まります(イカリ役はギタリストのMIYAVI)。出し惜しみせずにコング登場はサービスが良いです。
髑髏島にはコングだけでなく、大きな生き物や気持ち悪い生き物がたくさんいます。それらが人間をむしゃむしゃ食い殺したり、ぐしゃぐしゃ踏み潰したりします。正に「どうぶつ奇想天外!」です。
過去に『キングコング』は3作品作られています。1作目は1933年公開の『キング・コング』で、これをリメイクしたのが2005年公開のピーター・ジャクソン監督版『キング・コング』です。それに加えて、1976年公開のジョン・ギラーミン監督版の『キングコング』もあります。これらの作品と本作の大まかなストーリーは同じですが、拉致されたコングがニューヨークで見世物にされてから暴れるエピソードが無い点で、本作は異なります。
おそらく本作が強く意識したのは、フランシス・フォード・コッポラ監督の戦争映画『地獄の黙示録』でしょう。アメリカがベトナム戦争終結を宣言した1973年の時代設定であること、髑髏島の密林をナパーム弾で爆撃するシーンがあること、人間側の主人公コンラッド(トム・ヒドルストン)の名前が『地獄の黙示録』の原作である『闇の奥』の作者ジョセフ・コンラッドに由来することから、そう思われます。
『地獄の黙示録』では、優秀なアメリカ兵のカーツ大佐がカンボジアの密林の奥に王国を築きます。その王国はカーツ大佐の内なる野蛮をむき出しにしたものです。本作では、調査遠征隊のアメリカ兵パッカード(サミュエル・L・ジャクソン)が、髑髏島の守護神であるコングという野蛮と出会ったことから内なる野蛮をむき出しにして狂っていきます。
パッカードの狂気を加速させたのは、ベトナム戦争で部下たちを戦死させてしまったことによる罪悪感です。パッカードにとってコングとの戦いはベトナム戦争の続きであり、戦死者の敵討ちなのです。しかし、感情に任せて理性的な判断力を失ったパッカードの戦いは新たな戦死者を生み、泥沼化していきます。パッカードの行動はベトナム戦争におけるアメリカと重なります。
パッカードはコングという野蛮と対決する自分を野蛮ではないと信じています。しかし、コングを守護神と崇める髑髏島の住民たちは礼儀正しく、本当に野蛮なのはどちらかという問いを観客に投げかけています。
以上のように、本作のコングには戦争の影が落とされ、それは過去の『キングコング』と異なるものです。何故そうしたかは、核実験によって生み出されたという形で戦争の影が落とされているゴジラと対決する『ゴジラVSコング(仮題)』があるからでしょう(本作はエンドロールの後まで観てください)。
★★★★★(2020年2月22日(土)DVD鑑賞)
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