【映画評】座頭市千両首 | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

どうも。韓国映画界はハリウッドに追い着けと30年近くも頑張り、自国の映画がオスカーを手にする結果を出しました。「地道にコツコツ努力する」のは日本人の美徳のはずです。その日本はカジノ解禁で一発当てて景気回復しようとするのですから何とも……。

 

それはさておき、映画の感想文を書きます。今回は『座頭市千両首』です。

 

かつて誤って斬った男の墓参りに訪れた村で、市は村の上納金千両を強奪した疑いをかけられてしまう。1964年公開作品。監督は池広一夫で、出演は勝新太郎、坪内ミキ子、長谷川待子、城健三朗(若山富三郎)、島田正吾、北城寿太郎、石黒達也、丹羽又三郎、植村謙二郎。

 

盲目にして居合斬りの達人である市を、勝新太郎が演じる人気時代劇シリーズの第6作です。第2作『続・座頭市物語』の城健三朗(若山富三郎)、第3作『新・座頭市物語』の坪内ミキ子が前回と異なる役で再登場しています。また第4作『座頭市兇状旅』で名和広が演じた国定忠治役は島田正吾に代わっています。シリーズ物では、よくあることです。

 

それにしても勝新、城、島田と大物俳優が共演していると、迫力があります。何となく「三大怪獣決戦」というテイストに近いものがあります。

 

流浪の旅人である市(勝)は、墓参りに訪れた村で村人たちの温かさに触れ、安堵する一時を過ごします。しかし、村の上納金千両が強奪される事件が起こると、犯人の濡れ衣を着せられ、村人たちに盲だと罵倒されます。犯罪でパニックになった民衆が、よそ者(中国人、韓国人などの外国人)や障害者(知的障害または精神疾患がある者)を犯人と疑い、スケープゴートにするのは、いつの時代にもあることです。

 

犯人の濡れ衣を着せられたのは市だけでなく、国定忠治(島田)一家もです。山中に潜伏していた忠治に会った市は、互いの身の潔白を確かめ、忠治を逃がす手助けをします。そして市や忠治一家を犯人に仕立て上げたのは、代官とその片棒を担ぐヤクザ者の紋次だと知ります。公務員が血税を不正に着服したり、反社会的勢力と陰で仲良しだったりするのも、いつの時代にもあることです。

 

代官と紋次を斬り、取り返した千両を村に送った市を追うのは、代官に雇われていた用心棒の十四郎(城)です。シリーズ二度目の兄弟対決です。十四郎の鞭さばきに苦戦する市でしたが、渾身の居合で斬り倒します。遠くから村の祭囃子が聞こえても、傷だらけの市は村に寄らず、一人で旅立っていきます(最終対決と村祭りが同時になるのは、北野武版『座頭市』でも用いられ、それが勝新版へのオマージュだと分かります)。

 

本作は時代劇という形式でありながら、いつの時代にもあることを取り入れているので、現代人にも共感できます。その中で、孤独なダーティーヒーローである市の生き様もまた現代人の心に響くものがあるのです。

 

★★★☆☆(2020年1月30日(木)DVD鑑賞)

 

 

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