どうも。近頃中性的な言動や衣装が多い氷川きよしは、美川憲一の枠を継承するのでしょうか。
それはさておき、映画の感想文を書きます。今回は『15時17分、パリ行き』です。
2015年8月21日、オランダのアムステルダムからフランスのパリへ向かう高速列車タリスの中で、銃で武装したイスラム過激派の男が無差別殺傷を試みる。しかし、その列車にたまたま乗り合わせていた米空軍兵のスペンサー・ストーンとオレゴン州兵のアレク・スカラトス、そして2人の友人である青年アンソニー・サドラーが男を取り押さえ、未曾有の惨事を防ぐことに成功する。映画は、幼なじみで親友同士のスペンサー、アレク、アンソニーの3人が出会った少年時代や、事件に遭遇することになるヨーロッパ旅行の過程を描きながら、ごく普通の若者たちが、いかにしてテロリストに立ち向かうことができたのかを明らかにする(映画.comより引用)。2018年日本公開作品。監督はクリント・イーストウッドで、出演はスペンサー・ストーン、アレク・スカラトス、アンソニー・サドラー、ジェナ・フィッシャー、ジュディ・グリア。
主役の3人をプロの俳優ではなく、素人である本人が演じています。この大胆なキャスティングは、事件の再現度の高さだけでなく、本物のニュース映像を使用できる点もメリットになります。クリント・イーストウッド監督の『ハドソン川の奇跡』のエンディングにおいて、本物のニュース映像を使用した時、同一人物の外見が異なることによって生じた現実と虚構の分断は、本作では回避されています。
少年時代のスペンサー、アレク、アンソニーは優等生ではなく、普通または落ちこぼれの部類に入ります。特に、スペンサーのダメさが強調して描かれています。その3人が、列車内の無差別テロという危機的状況で、瞬時に的確な判断をして、英雄になったことに価値があります。これは、『ハドソン川の奇跡』におけるサリー機長に対する見方と同じです。
本作では、実際に現場で行動することが大事であり、事前に「そんなの出来っこない」とか、あるいは事後に「こうすれば良かったのに」とか口を出してくる奴らはバカだという価値観が根底にあるようです。それは、自作に同じようなことを言う映画関係者や映画評論家に対する、イーストウッド監督からの批判のようでもあります。
そして、本作は主役の3人を生い立ちから普通の若者として描くことによって、英雄の実像に迫っています。英雄と称賛される者は、結果的にそうなっただけで、生まれ育った頃から聖人君子だったのではありません。一人の人間としての苦悩もある人生だったはずです。この英雄の実像は、『父親たちの星条旗』や『アメリカン・スナイパー』にも共通した描かれ方です。
それでも、国家は国威発揚のため、理想の英雄像を作り、それを一人の人間に押し付けて演じさせることを度々行ってきました。しかし、それは正しいことなのでしょうか。ベルトルト・ブレヒトの戯曲『ガリレオの生涯』の台詞を少し変えれば、英雄がいない国は不幸ですが、作られた英雄を必要とする国はもっと不幸なのです。
★★★☆☆(2019年12月26日(木)DVD鑑賞)
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