【映画評】ウディ・アレンのザ・フロント | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

どうも。有馬記念で本命のアーモンドアイが9着になり、M-1グランプリで本命の和牛が4位になった2019年12月22日でした(M-1グランプリでは、私が推したミルクボーイの優勝だったので嬉しいです)。

 

それはさておき、映画の感想文を書きます。今回は『ウディ・アレンのザ・フロント』です。

 

ニューヨークで活動する脚本家ミラーは、共産主義者のブラックリストに名前を載せられたために仕事ができなくなってしまう。そこで彼は、行きつけのバーで働く冴えない男ハワードに名前を貸してもらうことに。ミラーが書いた脚本は好評を呼び、ハワードは人気脚本家として一躍脚光を浴びる。ところが、やがてハワードの元にも赤狩りの調査の手が迫り……(映画.comより引用)。1976年製作で日本劇場未公開作品。監督はマーティン・リットで、出演はウディ・アレン、ゼロ・モステル、ハーシェル・ベルナルディ、マイケル・マーフィ。

 

監督兼俳優として活動するウディ・アレンが、本作では俳優として出演するのみです。クリント・イーストウッドや北野武(ビートたけし)が、必ずしも自身の監督作品しか出演しないわけではないのと同じです。

 

1950年代のアメリカで吹き荒れた共産主義者追放運動、通称「赤狩り」をテーマにした作品です。監督のマーティン・リット、脚本のウォルター・バーンスタイン、出演者のゼロ・モステルは、当時実際にブラックリスト入りしています。それ故、作品に対する情熱が強かったようです。

 

コメディアンのヘッキー(モステル)は、カワイ子ちゃん目的でメーデーデモに参加した経験があるだけなのにアカ認定され、ブラックリスト入りしたためにテレビの仕事を干されます。失意のドン底に落ちたヘッキーは、家族を残して自殺するほど追い込まれるのです。異常な狂乱の時代です。

 

赤狩り旋風は映画業界に吹き荒れ、ジョン・ヒューストンのように自らアメリカを去った者や、チャールズ・チャップリンのように強制的に国外追放された者がいました。アメリカに残ったダルトン・トランボは偽名で脚本を書き、その脚本作である『ローマの休日』や『黒い牡牛』が高く評価されました。ハワード(アレン)が脚本家ミラーの隠れ蓑=フロントになる設定は、トランボなど偽名で活動した脚本家が元ネタになっています。

 

ミラーだけでなく、更に2人の脚本家のフロントになったハワードは、売れっ子脚本家になります。三人寄れば文殊の知恵でアイデアが尽きませんからね。そのハワードにも赤狩り調査の手が迫ってきます。ハワードが仲間を売るかどうかの決断をするのがラストシーンです。

 

共産主義陰謀論を信じたバカな共和党右派が、愛国心の名の下で行った暴挙により、アメリカの自由と民主主義を大きく揺るがしたのが赤狩りの時代です。半世紀以上も昔の外国の話です。しかし、現代日本のネット社会では、知識も教養もないバカども(通称ネトウヨ)が愛国者を装い、真っ当な政権批判をした者を「反日」や「左翼」と認定し、誹謗中傷や罵詈雑言を書き散らかしています。赤狩りの時代を他山の石としなければ、日本はバカの国に堕ちていくだけでしょう。

 

★★★★☆(2019年12月13日(金)DVD鑑賞)

 

 

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