【映画評】甘い夜の果て | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

どうも。「誰々君もやっているから、僕は悪くありません」という言い訳が通用するのは、小学校低学年の学級会までです。法に違反した者は皆(与党でも野党でも)罰するのが、法治国家に属する大人の在り方です。

 

それはさておき、映画の感想文を書きます。今回は『甘い夜の果て』です。

 

上昇志向溢れる野心的な若者が、女を利用して出世しようと企むのだが……。1961年公開作品。監督は吉田喜重で、出演は津川雅彦、嵯峨三智子、山上輝世、滝沢修、杉田弘子、日高澄子、浜村純、佐々木孝丸。

 

吉田喜重の監督3作目にして、デビュー作『ろくでなし』と同じく、津川雅彦が主演しています。

 

津川は美青年の手塚二郎役なので、当時は二枚目路線で売っていたということになります。津川の家系には、父の沢村国太郎、叔父の加東大介、兄の長門裕之と三枚目路線がいるので、津川は一族の異端児とも言えます。後年の津川は三枚目の役も演じましたが、どうしても長門に一日の長があったような気がします。

 

本作では、手塚の心境や運命を暗示するため、乗り物を効果的に用いています。オートバイとモーターボートは若さゆえの疾走感を、天辺まで昇った観覧車は企みが成功しつつある有頂天状態を表しています。しかし、観覧車は最終的に地上に降りてくるものであり、それが手塚の運命を予告しています。

 

手塚は美貌と若い肉体を持った青年であり、金さえあれば成功できると信じています。そのため、田舎娘のはるみ(山上輝世)を家出させ、石油会社常務の本堂(滝沢修)の愛人にしたり、鋳物工場の社長未亡人である雅枝(杉田弘子)と結婚したりと策略を巡らし、大金を得ようとします。

 

ところが、はるみは手塚の下を去り、鋳物工場は赤字で石油会社に買収されるという結果で、手塚の企みは失敗に終わります。失意の手塚は、美貌と若い肉体しか取り柄がなく、バーのマダム爽子(嵯峨三智子)の男妾になり、「一生飼い殺しにしてあげる」と告げられます。手塚は、もう笑い続けるしかありませんでした。

 

本作で描かれているのは、世間を甘く見た若者の挫折であり、その世間を構成している大人たちの老獪さ、嫌らしさ、怖さなのです。

 

★★★☆☆(2019年11月8日(金)DVD鑑賞)

 

 

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