【映画評】いつか誰かが殺される | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

どうも。後先考えずに喧嘩を売り、大事になっても現実を直視しないのは、戦前も戦後も変わらぬ日本外交の稚拙さです。

 

それはさておき、映画の感想文を書きます。今回は『いつか誰かが殺される』です。

 

父親の失踪とともに謎の事件に巻き込まれた女子高校生が、いろいろな人間に出合い成長していく姿を描く(映画.comより引用)。1984年公開作品。監督は崔洋一で、出演は渡辺典子、古尾谷雅人、松原千明、白竜、尾美としのり、斎藤晴彦、河原崎長一郎、白川和子、真木洋子、橋爪功、石橋蓮司、加藤治子。

 

角川春樹プロデュースで、赤川次郎原作の角川映画です。併映作品は和田誠監督の『麻雀放浪記』で、こちらが本作より後世に語り継がれる作品になっています。

 

主演は渡辺典子です。薬師丸ひろ子、原田知世と共に「角川三人娘」と呼ばれました。しかし、薬師丸と原田に比べ、渡辺はブレイクし損なった印象があります。演技力では、他の二人に劣っていないのですけどね。

 

今見ると驚くのは、若き日の白竜が出演していることです。Vシネマ暮らしで貫録がついた現在の姿と違い、シュッとして爽やかなロックンローラーです。

 

80年代の角川映画は若い監督にチャンスを与えてきました。本作が三本目の監督作であった崔洋一も、その一人です。崔監督は当時若手でありながら、本作において強く個性を打ち出しています。

 

赤川の原作小説を未読なので断言できませんが、主人公の敦子(渡辺)を助けるアウトロー集団の設定には、崔監督のアレンジが入っていると思われます。この集団は偽ブランド品を売りさばく、多人種で無国籍な根無し草の集まりです。後に崔監督は『平成無責任一家 東京デラックス』において、詐欺師一家を描いています。偽ブランド品販売も詐欺も「人を欺く」という点で共通しています。

 

また、メンバーである高良(古尾谷雅人)と梨花(松原千明)は沖縄出身であり、パーティーでオリオンビールを飲みます。「沖縄」というワードは、『友よ、静かに瞑れ』『Aサインデイズ』『豚の報い』に結びつきます。そして、白竜が演じるメンバーの趙烈豪は在日朝鮮人です。崔監督の出自とも深く関係する「在日」については、『月はどっちに出ている』『血と骨』のメインテーマとして描かれています。

 

このように、崔監督は初期作品である本作において、既に自分が映画でやりたいことを提示していたと解することができます。少々ネタバレ気味になりますが、終盤で国家間の陰謀よりも血の繋がりを重視するという展開になることにも、在日である崔監督の思想が反映されているのでしょう。

 

★★★☆☆(2019年8月8日(木)DVD鑑賞)

 

 

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