どうも。維新を除名された議員はN国へ。上流から下流へと流れたゴミは溜まって悪臭を発します。
それはさておき、映画の感想文を書きます。今回は『男はつらいよ 私の寅さん』です。
フーテンの寅こと車寅次郎が、故郷柴又にて巻き起こす笑いと騒動を描く人情喜劇(映画.comより引用)。1973年公開作品。監督は山田洋次で、出演は渥美清、倍賞千恵子、松村達雄、三崎千恵子、前田吟、太宰久雄、佐藤蛾次郎、笠智衆、津川雅彦、前田武彦、岸惠子。
国民的人気シリーズの第12作です。マドンナである柳りつ子役を演じるのは、岸惠子です。岸がマドンナ役を演じたのは本作だけで、他の山田洋次監督作品では『たそがれ清兵衛』にしか出演していません。山田監督と相性が良い女優ではないようです。岸の出演作では市川崑監督作品のイメージが強く、山田監督と市川監督では作風が全く異なりますからね。
本作には津川雅彦が出演しています。津川が山田監督作品に出演するのは珍しいことで、キザで嫌味な画商役を演じています。後年ネトウヨ爺と化した津川が、日本共産党シンパである山田監督を槍玉に挙げ、「左翼が日本映画をダメにした」と見当違いな批判をしたことを思えば、意味ありげに見える配役です。
細かいことでは、タコ社長(太宰久雄)の娘が声だけの初出演をしています。後にタコ社長の娘あけみ役は、第34作『男はつらいよ 夜霧にむせぶ寅次郎』から美保純が演じます。本作における、あけみの声が美保ではないのは明らかです。
本作の前半は、とらやの面々が九州旅行に行くので、帰ってきた寅さん(渥美清)が留守番をするという話です。これは、放浪の旅人である寅さんが待たされる身になるという逆転現象であり、マンネリ打破です。『男はつらいよ』シリーズをマンネリの一言で片付ければ、一人前の映画批評をした気になるのはバカです。
後半は、いつもどおり寅さんがりつ子にフラれる展開です。表面的には「いつもどおり」ですが、りつ子の職業が画家ということもあり、ショパンの『別れの曲』がBGMに流れるという意外な演出になっています。これもマンネリ打破です。
『男はつらいよ』シリーズには喜劇俳優のみならず、お笑い芸人が出演することもあります。本作では、寅さんの同級生で、りつ子のダメ兄貴でもある柳文彦役を前田武彦が演じています。『男はつらいよ』シリーズを含む山田監督作品の撮影現場には、アドリブ禁止ルールがあるそうです。当然ながら前田にもそのルールが適用され、芸人の性として出てくるアドリブを封じられたことになります。
自分の演技に自信やプライドがある役者にとって、アドリブを禁止されることは個性を潰す愚行になります。しかし、アドリブを禁じて定型を演じさせることによっても滲み出てくるのが、本当の個性ではないでしょうか。そして、この考え方は一見して定型どおりでありながら、実は一作ごとに個性的な『男はつらいよ』シリーズの本質でもあるのです。
★★★☆☆(2019年7月27日(土)DVD鑑賞)
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