【映画評】危いことなら銭になる | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

どうも。将来ある高校球児が炎天下で肉体を酷使してまで、タダ見している視聴者の「感動をありがとう」オナニーに奉仕する必要はあるのでしょうか。球児はプロフェッショナルじゃなくて、アマチュアですよ。

 

それはさておき、映画の感想文を書きます。今回は『危いことなら銭になる』です。

 

大金の偽札をめぐるクライム・アクション・コメディ。1962年公開作品。監督は中平康で、出演は宍戸錠、長門裕之、浅丘ルリ子、草薙幸二郎、左卜全、武知杜代子、浜田寅彦。

 

タイトルの「危い」は「ヤバい」と読みます。今だったら出川哲朗やナダル(コロコロチキチキペッパーズ)の顔が浮かんでくるワードです。「ヤバい」は元々賭場用語であるらしく、当時タイトルに用いるのは斬新だったのでしょうか。

 

登場人物のキャラクターが濃過ぎて、まともな人間が一人も出てきません。ガラスのジョー(宍戸錠)は一流の拳銃使いでも、ガラスを擦る音に弱いという情けない弱点があります。計算機の哲(長門裕之)は物事を決めるのに確率計算をし、その数字しか信用しません。とも子(浅丘ルリ子)はパリで柔道教師になることを目指し、男相手でも投げ飛ばしてしまいます。ブル健(草薙幸二郎)は捕らえたギャングの手下を拷問するのにダンプカーを使い、更にギャングの店であるキャバレーにダンプカーを突っ込ませます。偽札作りの名人坂本(左卜全)はスケベな爺さんで、その妻(武知杜代子)は守銭奴の婆さんです。

 

ギャング連中が、まともな人間に見えるほど、濃いキャラクターの中で一番活きが良かったのは長門です。長門は『秋津温泉』のようにシリアスな二枚目を演じるより、コミカルな三枚目を演じる方が実力を発揮できます。父の沢村国太郎、叔父の加東大介から継承した芸風ですね。

 

ガラスのジョー、計算機の哲、ブル健、とも子は、やがて共闘して一つのチームになり、偽札を手に入れようとします。個性的な男3人と女1人の泥棒チームと言えば、ルパン三世、次元大介、石川五エ門、峰不二子の『ルパン三世』と同じです。本作の脚本を書いた山崎忠昭は、後に同作のテレビシリーズの脚本も書いています。テレビ版『ルパン三世』は鈴木清順が監修を務めたり、大和屋竺が脚本を書いたりして、日活テイストを取り入れようとした気がします。それ故、本作とリンクする部分があっても不思議ではありません。

 

本作の上映時間は82分と短く、軽快なテンポで物語を進行させ、奇抜なアイデアやカットを入れてくるという攻めた姿勢の作品になっています。何かに似ていると思ったら、石井輝男監督&千葉真一主演の直撃地獄拳 大逆転』を上品にした感じです。同作が下ネタてんこ盛りの素晴らしきバカ映画であるのに対し、それに先んじた本作は、まだその高み(?)にまで到達していませんし、到達すればいいというものでもありません(因みに本作と『直撃地獄拳 大逆転』の両作品に出演しているのは、宍戸の実弟であり、ちあきなおみの亡夫である郷鍈治です)。

 

本作の中平康監督は、ジョーたちとギャング一味の銃撃戦の後、死体をリアルかつ凄惨に描いています。これは従来のアクション映画における「約束事」に対する批判になっています。娯楽映画が作品の質を期待されていないのを良いことに、中平監督は映画に対する実験や挑発を行っていたようであり、本作もその一つである傑作です。

 

★★★★☆(2019年7月10日(水)DVD鑑賞)

 

 

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