【映画評】レイニング・ストーンズ | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

どうも。G20で自由貿易を掲げておきながら、他国への輸出規制をかける二枚舌は、国際社会における日本の信用を低下させるのではないでしょうか。

 

それはさておき、映画の感想文を書きます。今回は『レイニング・ストーンズ』です。

 

もうすぐ聖餐式を迎える娘のために新品のドレスを買ってやろうと考えるボブ。しかし彼は失業中で借金も抱え、毎日を暮らしていくのがやっとという有様。彼は金を手に入れるため、羊泥棒からディスコの店員までなりふりかまわず必死に働く。そして式が目前に迫ったある日、彼の元に悪徳高利貸の男が現れ……(映画.comより引用)。1994年日本公開作品。監督はケン・ローチで、出演はブルース・ジョーンズ、ジュリー・ブラウン、ジェマ・フェニックス、リッキー・トムリンソン、トム・ヒッケイ。

 

社会派の巨匠であるケン・ローチ監督が、イギリスの失業問題の深刻さを全体的にコメディ調で、後半からサスペンス調で描きます。ローチ監督はイギリスの庶民、特に貧困層の生活を撮るのが十八番ですね。

 

主人公ボブ(ブルース・ジョーンズ)は羊泥棒、ディスコの用心棒、芝泥棒までやっても、十分な金を貯めることができません。一攫千金を狙ってギャンブルに手を出したのは良くないとしても、ボブが金策に苦労するのは彼の才覚だけが原因ではありません。そこに「自己責任」で全てを片付けようとする新自由主義的傾向に対する批判を見ることができます。

 

ボブが金を必要とするのは、娘の聖餐式(カトリックの宗教的行事)のためです。そのため、悪徳高利貸しから借金し、家族が執拗な取り立てを受ける事態になります。怒ったボブは悪徳高利貸しを襲い、死なせてしまいます。ボブは自首しようとしますが、神父に説得され、犯行を隠蔽することにします。悪徳高利貸しの死は事故死として処理され、聖餐式は無事に執り行われますが、ボブの表情は曇っています。

 

ボブが家計を圧迫してまで聖餐式に執着するのは、彼の信仰心に基づきます。しかし、ボブが内に秘めた、悪徳高利貸しを殺めてしまったという良心の呵責は信仰によって救い切れなかったのです。

 

そこから、本作の根底に無神論があるように解することができます。「神はいない。いたとしても無力だ。お前を救ってはくれない。神を信じるな。それより自分を信じろ。現実を見ろ。本当の敵は、そこにいる」とでも言うべき、救いを求める貧困層へのエールを感じることができるのです。

 

★★★☆☆(2019年6月11日(火)DVD鑑賞)

 

 

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