【映画評】家族はつらいよ | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

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結婚50年を目前に控えた平田夫妻。夫はもうすぐ誕生日を迎える妻にプレゼントを贈ろうと欲しいものを尋ねるが、その答えはなんと「離婚届」だった。突如として持ち上がった離婚話に、彼らの子どもたちは大慌て。すぐに家族会議が開かれることになるが、それぞれが抱えてきた不満が噴出してしまう(映画.comより引用)。2016年公開作品。監督は山田洋次で、出演は橋爪功、吉行和子、西村雅彦、夏川結衣、中嶋朋子、林家正蔵、妻夫木聡、蒼井優、小林稔侍、風吹ジュン、笹野高史、木場勝己、徳永ゆうき、笑福亭鶴瓶。
 
本作は、山田洋次監督が『東京家族』と同じ構成の家族のキャラクター設定を変えることによって作り出した喜劇です。『東京家族』は小津安二郎監督の『東京物語』の山田流アレンジですが、本作は『東京家族』を基にした山田監督オリジナルの作品になっています。それ故に劇中で父・周造(橋爪功)が『東京物語』のDVDを観るシーンは、同作を本作と別世界のものとして切り離す意味を持っています。
 
山田監督オリジナルなので、設定に遊び心を加えた部分があります。母・富子(吉行和子)の亡き弟が小説家だったり(吉行の亡き兄は吉行淳之介)、次男の嫁・憲子(蒼井優)が福岡県出身だったりするのは、演じている本人とリンクさせています。長女・成子(中嶋朋子)の言う「テレビに出てくる落語家みたいな顔をした医者」を演じるのが、笑福亭鶴瓶であるのも、その一つです。鶴瓶が医者役というのは、西川美和監督の『ディア・ドクター』を意識したネタのようでもあります。
 
それにしても、長男の嫁・史枝役を演じる夏川結衣のオバサン化には驚かされます。役柄にピッタリだから、良いことなのですが。現在の夏川しか知らない人には、『夜がまた来る』の頃の彼女を見せてあげたいです。
 
作品としては、熟年離婚をめぐる家族内の騒動であり、ウィットとセックスが無いウディ・アレンの映画のような感じです。本作の群像劇スタイルは、山田監督の新作『男はつらいよ』にも適用されるのでしょうか。物語の軸となる寅さんが不在なので、そうせざるを得ないと予想します。
 
次男・庄太(妻夫木聡)の職業がピアノの調律師であることにかけて、本作には、久石譲によるピアノ中心の楽曲が使用されています。物悲しさを感じさせる曲調であり、同じ「家族」をテーマとする『男はつらいよ』シリーズで使用された、山本直純による楽曲とは印象が異なります。それは、音楽によって家族観の変化を表現した粋な演出なのでしょうか。
 
★★★☆☆(2019年5月13日(月)DVD鑑賞)
 
林家正蔵のことを未だに「こぶ平」と呼んでしまいます。
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