明治二十六年発行の『新撰小學讀本巻五』を紹介します。なお、読み易くするため、地の文は平仮名に統一し、文字化けを防ぐため、漢字は所々新字体に改めます。
第六課 猿の人眞似。
或時二人の旅人相伴ひて、ふかき山路にかかりたり。其途中にて、足の疲れを休めんため、しばらく休息し、四方のけ色をながめて、よねんなき折柄、一疋の猿は、ひそかに、旅人のそばにありし、風呂敷包をうばひて、きふに逃げ去れり。
二人はおどろきて之を追ひしに、猿は、最早高き木の上に昇れり。よりて二人は、色々と工夫し、猿の人眞似を好むこと思ひ出し、一人は木に昇りて、同じやうなる風呂敷包を投げしかば、果して猿は之にならひ、前にうばひし風呂敷包を投げ出せり。故に旅人は、之を取り返すことを得たりとぞ。

【私なりの現代語訳】
ある時二人の旅人が一緒に旅し、深い山道にかかりました。その途中で、足の疲れを休めるため、しばらく休息し、四方の景色を眺めて、余念がない時、一匹の猿は、密かに、旅人の傍にあった、風呂敷包みを奪って、急に逃げ去りました。
二人は、驚いてそれを追ったところ、猿は、もはや高い木の上に昇っていました。よって二人は、色々と工夫し、猿が人真似を好むことを思い出し、一人が木に昇って、同じような風呂敷包みを投げれば、思ったとおりに猿はそれに倣って、前に奪った風呂敷包みを、投げ出しました。故に旅人は、それを取り返すことができたのです。
【私の一言】
猿は人真似をする性質があると言われます。他人の真似ばかりする猿並みの人というのも、たまにいますけどね。
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