
幕政改革を目指す老勘定奉行を狙う刺客と、眠狂四郎との闘いを描く(Yahoo!映画より引用)。1964年公開作品。監督は三隈研次で、出演は市川雷蔵、加藤嘉、藤村志保、高田美和、久保菜穂子、須賀不二男。
市川雷蔵主演の時代劇「眠狂四郎」シリーズの第2作です。真っ当な正義漢とは呼べない、ニヒルな性格の狂四郎を雷蔵が演じています。本作以前に藤村志保と共演した『破戒』で演じた役柄とは全く異なり、雷蔵の幅広い演技力を感じます(藤村が演じる采女も『破戒』で演じた役とは全く異なりますけど)。
同じ大映時代劇には、勝新太郎の「座頭市」シリーズがあります。狂四郎も市も「清く正しい正義のヒーロー」と呼ぶのが適当ではないキャラクターです。従来の単純明快な勧善懲悪を良しとするチャンバラ時代劇に飽きた観客が、狂四郎や市のようなダーティー・ヒーローを求めたのでしょう。
狂四郎の場合、女を虜にする色気という要素があり、そこは市と異なります。本作でも、将軍の娘という身分故に高慢で我儘な性格に育った高姫(久保菜穂子)に対し、大胆不敵に振る舞うことにより、その心を揺り動かし、自分を恋い慕うまでにしてしまいます。これは、市のキャラクターでは不可能な業です。
ところが、本作の見所は狂四郎ではありません。老勘定奉行の朝比奈を演じる加藤嘉が真の見所です。冒頭で老侍を演じる加藤を見た時、またチョイ役かと思っていたら、何と最後の方までずっと出続ける重要人物だったので驚きました。しかも加藤は作品を通して、喜怒哀楽全ての感情表現を見せてくれます。『砂の器』程度では物足りないと、お嘆きの加藤マニアにとって本作は必見です(加藤マニアが実在するかどうかは知りません)。
★★★☆☆(2019年3月6日(水)DVDで鑑賞)