
盗まれた石膏像の首をめぐって起こる連続殺人事件を解決する金田一耕助の活躍を描く(映画.comより引用)。1979年公開作品。監督は大林宣彦で、出演は古谷一行、田中邦衛、吉田日出子、坂上二郎、熊谷美由紀、仲谷昇、山本麟一、東千代之介、樹木希林。
横溝正史の『瞳の中の女』が原作なので、一応「金田一耕助」シリーズの一作です。しかし、市川崑監督のシリーズが『病院坂の首縊りの家』で一旦終了したのを機に、それまでの「金田一耕助」シリーズが築き上げたイメージを破壊するコメディに仕上がっています。
どこか志村けんにも見える古谷一行が演じる金田一は、ローラースケートで駆け回ったり、ディスコで軽快に踊ったりします。テレビドラマ版でも、そんなことはやらなかったのに。
全編がパロディで埋め尽くされた映画です。角川映画のセルフパロディだけでなく、当時のヒット作のパロディも盛り込まれています。どれだけ元ネタを知っているかで映画通の度合いを測ることができます。
真面目な金田一ファンは本作を酷評するでしょう。しかし『HOUSE ハウス』の大林宣彦が監督するからには、まともな本格的ミステリーになることを期待するのが間違っています。
本作では劇中にCMが挿入される奇抜な演出がなされます。それは大林監督がCM監督出身だからです。近年のCM監督出身者には、中島哲也や吉田大八がいて、高い評価を受けています。大林監督は彼らの先駆者であり、従来の日本映画における既成概念に囚われない発想が売りです。
意識したのか分かりませんが、中島の『下妻物語』『嫌われ松子の一生』『パコと魔法の絵本』における悪ふざけのような演出は、本作に通じるものがあります。これらの作品は奇抜な外観を纏っていながら、実は芯が通ったドラマになっています。
それは本作も同じなのではないでしょうか。終盤における金田一の演説シーンから、大林監督なりの愛みたいなものを感じるような気もしてくるのです。
★★★☆☆(2019年3月2日(土)DVDで鑑賞)