【映画評】ぼんち | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

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舞台は大阪・船場。四代続いた裕福な足袋問屋の一人息子が、女系家族の中で甘やかされ、それゆえに悪戦苦闘する姿が、多彩な女性関係を中心にして年代記風に描かれている(上映会パンフレットより引用)。1960年公開作品。監督は市川崑で、出演は市川雷蔵、京マチ子、若尾文子、越路吹雪、草笛光子、中村玉緒、山田五十鈴、船越英二、毛利菊枝、北林谷栄、中村鴈治郎。
 
市川崑監督作品に出演する市川雷蔵は、得意な時代劇ではなく、専ら現代劇で、しかも変わった役に挑戦します。『炎上』では吃音の学僧を、『破戒』では部落差別に苦悩する教師を演じました。本作では老け役に挑戦しています。老いた主人公の回想という形で、本作は構成されています。
 
主人公を取り巻く女たちを演じる女優陣が豪華です。しかも綺麗なだけでなく、したたかな女という生き物を演じています。主人公と女たちの関係は、後の『黒い十人の女』を生み出す源流となります。ちなみに本作の原作は山崎豊子で、市川監督との共同脚本は和田夏十なので、女性の視点が活かされているのでしょう。
 
宮川一夫による撮影は陰影が濃く、カラー映画であるにもかかわらず、「黒」と「黒ではない色」だけ認識して画面作りをしているかのようです。この画面作りの感覚は、「銀残し」という手法を用いて、更に独特の色彩を追求した『おとうと』を生み出します。
 
商家の場合、男子が生まれても、必ずしも跡取りとして尊重されるとは限りません。むしろ女子が生まれたら、優秀な男子を婿養子にできるので喜ばれることもあります。商売に必要な才覚は遺伝せず、それが無ければ、外部から導入するという商人(あきんど)のリアリズムを感じます(皇室や武家が男子の跡取りに固執するのは、商売して生活するというリアリズムを欠くからです)。
 
かつて女たちとの放蕩に明け暮れた主人公は、老いたにもかかわらず、足袋の商売で成功しようと夢を抱いています。しかし、戦後になって足袋を履く時代ではないので、成功しないと嘲笑されます。商家の跡取りという羨ましい身分は、主人公にとってコンプレックスであり、商売の才覚を証明することで克服したかったのでしょう。
 
★★★☆☆(2019年2月23日(土)秋田県・大館市民文化会館で鑑賞)
 
船場と聞いて思い出すのは、ささやき女将(船場吉兆)です。
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