
ある日、人間の脳を乗っ取って肉体を操り、他の人間を捕食する「パラサイト」と呼ばれる謎の寄生生物が出現。平凡な高校生活を送っていた泉新一も、一匹のパラサイトに襲われる。しかし、新一の脳を奪うことに失敗したパラサイトは、そのまま右腕に寄生し、自らを「ミギー」と名乗って新一と共生することに。当初は困惑した新一も、次第にミギーに対して友情に近い感情を抱くようになるが、やがてパラサイトと人間とが殺し合う事態が発生。新一とミギーもその争いに巻き込まれていく(映画.comより引用)。2014年公開作品。監督は山崎貴で、出演は染谷将太、深津絵里、阿部サダヲ(声)、橋本愛、東出昌大、岩井秀人、山中崇、オクイシュージ、池内万作、豊原功補、大森南朋、北村一輝、余貴美子、國村隼、浅野忠信。
(岩明均の原作漫画は未読なので、それを踏まえた見方ができないことをご了承ください)
人間が別の生命体に寄生されるSFは、『遊星からの物体X』など古典的なネタです。本作の場合、岩明均原作のデザインをどこまで再現できるかが、実写化に当たって重要でした。その問題をVFX技術の進歩が解決したから、実写映画化されました。
VFX技術が作品の出来を左右するとなれば、『ALWAYS 三丁目の夕日』をヒットさせた山崎貴を監督として適任と考えるのが妥当な線です。そしてヒットメーカーである山崎を監督としたことにより、豪華な出演者を集めることができました。その出演者の演技力により本作は救われています。
主人公である泉新一を演じた染谷将太は、彼が置かれた状況をどうやって想像したのでしょうか。まず身の回りに参考になる人(自身に寄生した生物と会話できる人など)はいませんからね。それでも説得力ある形で演じ、中盤からの新一の「変化」も表現できています。
東出昌大がパラサイトの島田秀雄を演じたのはハマっています。大根演技と評されることが多い東出ですが、むしろ「人間ではない何か」の不気味さを表現する場合、その演技力が有効活用されます。東出は、そういう役を専門にする路線で行けるでしょう。
人間との共存を模索するパラサイトの田宮良子を演じた深津絵里が、自らの新境地を開いています。私が本作より前に深津をスクリーンで観たのは、2011年公開の『ステキな金縛り』です。当時に比べて明らかに老けた深津ですが、それが冷酷なパラサイト役を演じるに当たってプラスに作用しています。本作によって、深津は女優としてステップアップしました。
染谷ら出演者の演技力だけでなく、ミギー(阿部サダヲ)たち寄生生物の設定にも、本作は救われています。山崎監督の演出には、登場人物が自分の状況や心情を必要以上に話す説明過多という欠点があります。それはライトな観客にとって分かり易く、集客に繋がる作用を及ぼしますが、ヘビーな映画好きには、リアリティーを欠くとして不評です。
ところがミギーたち寄生生物が説明的な台詞を滔々と語っても、そもそも現実に存在しない非人間的な連中なので、リアリティーの問題が生じません。山崎監督の欠点である説明過多は、気にならない程度に隠されています。
SFにおける寄生ネタは、寄生生物を思想やイデオロギーのメタファーとする解釈が可能です。本作の寄生生物たちは人間と全く異なる価値観を有するので、その解釈がより適しています。
終盤にかけて話が大きくなり、後編である『寄生獣 完結編』に期待を持たせるようにして、本作は一旦幕を閉じます。
★★★★☆(2019年2月20日(水)DVD鑑賞)