
第2次世界大戦中のフランス。ドイツ軍によるパリ侵攻から逃れる途中、爆撃により両親と愛犬を亡くした5歳の少女ポーレットは、ひとりさまよううちに11歳の農民の少年ミシェルと出会う。ミシェルから死んだものは土に埋め、お墓を作ることを教わったポーレットは、子犬を埋め、十字架を供える。これをきっかけに、お墓を作って十字架を供える遊びに夢中になった2人は、教会や霊柩車からも十字架を持ち出してしまうが……(映画.comより引用)。1953年日本公開作品。監督はルネ・クレマンで、出演はブリジット・フォッセー、ジョルジュ・プージュリー、リュシアン・ユベール、シュザンヌ・クールタル、ルイ・サンテーブ。
ナルシソ・イエペスの悲しげなメロディの主題歌「愛のロマンス」で有名な映画です。
子供が主人公でヨーロッパの農村が舞台だと、宮崎駿のアニメ『天空の城ラピュタ』みたいです。子供だけでなく、動物がたくさん出てくるので、今だったら、心が汚れた映画マニアに「完全に泣かせにかかっている、あざとい映画」の烙印を押されるかもしれません。
実際の農村で撮影したからなのか、演者に蝿が止まることがあります。CG合成などない時代ですから、本物の蝿でしょう。ミシェル(ジョルジュ・プージュリー)の兄が亡くなったシーンでは、遺体の顔に蝿が止まっていました。神がかった偶然の産物です。
高畑勲のアニメ『火垂るの墓』でも顕著なように、子供の視点から戦争を描くと、痛々しさが強調されます。物心ついた時から、戦争という非日常に歪められた日常を生きて、その歪んだ日常を素直に受け入れてしまう子供の姿は悲しいです。大人は戦争の無い日常を知っていながら、妥協して戦争で歪んだ日常を生きます。戦争の無い日常を知らない子供の純粋さは、戦争をより残酷に映すのです。
ポーレット(ブリジット・フォッセー)とミシェルの墓作りは、大人たちから不謹慎な「禁じられた遊び」とされます。それならば、多くの人々を戦死させ、多くの墓を作る戦争もまた「禁じられた遊び」です。いい歳して、それなりの偉い地位にある大人が、そんな「遊び」にうつつを抜かしていたら、園児教育からやり直すべき大馬鹿野郎です。
★★★★☆(2019年2月19日(火)秋田県大館市・御成座で鑑賞)
私は泣けませんでした。心が汚れた映画マニアだから?