
私立探偵フィリップ・マーロウは百万長者スターンウッドの依頼を受ける。依頼内容はガイガーという男からの恐喝に関するものだったが、時を同じくして使用人のリーガンが姿を消していた。早速マーロウは張り込みを始めるが、そのガイガーは自宅で殺されてしまう……(映画.comより引用)。1946年アメリカ公開で、1955年日本公開作品。監督はハワード・ホークスで、出演はハンフリー・ボガート、ローレン・バコール、ジョン・リッジリー、マーサ・ヴィッカーズ、ドロシー・マローン。
レイモンド・チャンドラー原作のハードボイルドだど!(©内藤陳)。原作のストーリーが複雑であり、原作者のチャンドラーにも分からない謎があるそうです。その上、外国人の顔と名前を覚えられない人は、本作のストーリーを理解し難いでしょう。私もそうです。だから、本作をストーリーより画面から出る雰囲気で楽しみました。
ハンフリー・ボガートが演じる私立探偵フィリップ・マーロウは、危機的状況にあっても軽口を叩きます。ハードボイルド物とは、そういうものです。ハードボイルド物のパロディとも言える、テレビドラマ『探偵物語』で主人公を演じた松田優作も、そんな感じでしたから。それでも『あぶない刑事』の舘ひろしと柴田恭兵もハードボイルドなのかと問われたら、そうだと即答すべきか迷います。
本作はハードボイルド映画の手本として扱われ、後世の作品に大なり小なり影響を与えています。ところが、映像ソフトが普及した私の世代だと、フォロワーである後世の作品を先に観てしまってから、オリジナルである本作を観ているので、本作を観ても感動が薄いという残念な現象が起こります。やはり映画は出来るだけリアルタイムで追って行った方が良いですね。
本作の製作は1944年であり、日本とアメリカが太平洋戦争で交戦中のことです。物資が窮乏していく状況下で、何とか国威発揚のために国策プロパガンダ映画を作っていた日本に対し、物資に余裕があり、国威発揚目的のプロパガンダと無縁な大人の娯楽作である本作を作っていたのがアメリカです。戦争終結から10年経った1955年に本作を観た日本人は、そのことを思って、深く溜息をついたのかもしれません。
★★★☆☆(2019年1月31日(木)DVD鑑賞)