
6人の天文学者が巨大な大砲の砲弾に乗って月へと飛ぶが、月の住民と遭遇して戦いが起こり、月の王に捕われてしまう(映画.comより引用)。1902年製作のフランス映画で、1905年日本公開作品。監督と出演はジョルジュ・メリエスで、出演はジュアンヌ・ダルシー。
世界初のSF映画とされる白黒サイレント作品です。ジュール・ベルヌの『月世界旅行』とH・G・ウェルズの『月世界最初の人間』を基にした16分の短編映画です。今でこそ短編扱いですが、当時は16分でも長尺だったそうです。
ジョルジュ・メリエスが如何なる人物であったかは、マーティン・スコセッシの映画愛が伝わる『ヒューゴの不思議な発明』を観ると分かり易いです。メリエスは映画監督になるまで手品師や劇場主で生計を立てていました。その職業柄、本作でも特殊効果を用いて、観客を楽しませるサービス精神を発揮しています。こうしたメリエスの創作姿勢が、映画の起源が見世物であることを表しています。
本作では、人間を砲弾に乗せるという、ZOZOTOWNの前澤友作社長でもやらない無茶な方法で月面到達します。アポロ11号からの映像よりも、『2001年宇宙の旅』よりもずっと早く、本作は月面の様子を描いています。人間の想像力は凄いですね(『2001年宇宙の旅』公開がアポロ11号の月面着陸より先であることも十分に凄いことです)。
また、月の住民は『エイリアン』よりずっと早く世に出た異星人です。骨格がむき出しになったようなデザインは、『エイリアン』の造形デザインを担当したH・R・ギーガーに影響を与えたはずです(妄想)。
ところが、月面に到着した天文学者たちは宇宙服を着ないで外出し、月面には何故か巨大キノコが生えています。月の住民たちは天文学者が杖で叩くと煙になって消えるほど弱いです。SF(サイエンス・フィクション)というよりファンタジーに近い内容です。
現在の私たちが観れば、ツッコミどころ満載のトンデモSFと評価されてもやむを得ません。しかし今、時代の最先端科学知識を取り入れたSF映画も、1世紀先になれば笑い話の種になることもあります。科学の進歩とは、時代の流れとは、そういうものなのです。
★★☆☆☆(2019年1月3日(木)インターネット配信動画で鑑賞)
カラー着色したバージョンも存在します。