【映画評】座頭市喧嘩旅 | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

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盲目で居合の達人、市は旅の途中で、侍たちに追われる娘・お美津を助ける。お美津を江戸へ送り届けようとする市だが、地元のやくざ同士の抗争に巻き込まれていく。1963年公開作品。監督は安田公義で、出演は勝新太郎、藤村志保、島田竜三、藤原礼子、丹羽又三郎、中村豊、吉田義夫、沢村宗之助。
 
斬り合いに健常者も障害者もないという意味で、バリアフリーなブラインド・アサシンの座頭市が主人公です。勝新太郎主演の人気時代劇シリーズ第5作です。「前作『座頭市兇状旅』で市の仕込み杖が折れたはずでは?」という細かいことは忘れましょう。
 
市は煙草を吸い、酒を飲み、博打で遊ぶ、人殺しの凶状持ちというダーティー・ヒーローです。コンプライアンスにうるさい現在では、映画やテレビドラマで扱いにくい存在です(ビートたけしも香取慎吾も、勝新に比べれば、随分とクリーンな市を演じています)。
 
それでも、お美津(藤村志保)を守るために一人で戦うヒーロー的な面もあり、それ故、大衆の人気を博しました。殺し屋が少女を守る『レオン』に通じるものがあり、古今東西を問わず、カッコいい憧れの男性像です。
 
クライマックスの大乱闘シーンで、市がやくざたちを居合で斬り殺していく様子は、伊福部昭による重厚な音楽の効果で、怪獣映画(というか『ゴジラ』)を観ているような感覚になります。
 
市は居合の腕だけでなく、知恵も優れています。やくざとの乱闘の途中、井戸で水を飲んで休憩する時、桶で周囲に水を撒きます。そうすると水たまりができ、やくざが接近したら音で分かって斬ることができるのです。市が盲目でありながら、危ない世界で生き残ってきたのは、このような長所があるからですね。
 
大乱闘の途中、お美津を逃がし、市は残ったやくざたちと戦い続けます。お美津が市を心配しているシーンの後、戦い終えた市が一人で旅立つシーンで映画は終わります。実家が豪商である、お美津と関わってはいけないという、凶状持ちである市の悲しい宿命を表しています。
 
しかし、お美津を逃した後、市は多勢に無勢という状況にあり、市が残ったやくざたちを全滅させるシーンは描かれていません。更に死闘の後であるにもかかわらず、市の身なりが汚れていないことから、実のところ市は死んでしまったのではないかと深読みできます。そして、本作によって市は『素晴らしき哉、人生!』や『ベルリン・天使の詩』に登場する天使のように、現実的ではない存在まで高められたのではないでしょうか。
 
★★★☆☆(2019年1月1日(火)DVD鑑賞)
 
水戸や下妻という地名が出るので、本作の舞台は現在の茨城県です。楽天市場

 

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