【映画評】ザ・レイド GOKUDO | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

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上層部の命令を受け、潜入捜査官として生きることになった新人警官のラマは、名前を偽り、マフィアのボスの息子ウチョの信頼を得て組織の一員になる。しかし、父親に反発するウチョが組織内で成り上ろうと企てた陰謀により、ラマは対立する日本人ヤクザとの抗争や果てしない戦いに巻き込まれていく(映画.comより引用)。2014年日本公開作品。監督はギャレス・エヴァンスで、出演はイコ・ウワイス、アリフォン・プトラ、オカ・アンタラ、ティオ・パクソデウー、アレックス・アッパド、ジェリー・エステル、松田龍平、遠藤憲一、北村一輝、ヤヤン・ルヒアン。
 
いきなり断言しますが、大傑作です。続編が前作を上回ることが少ない映画界の常識を覆すレアケースです。私の知る限り、『ターミネーター2』くらいしか前例がありません。
 
前作を超えることができたのは、前作を潔く捨てたからです。前作『ザ・レイド』でラマ(イコ・ウワイス)が命懸けで戦って生かした二人を、序盤であっさりと殺して設定を強制リセットしています。また、前作が高層ビル内という閉鎖された空間での死闘だったのに対し、本作はそこから開放し、市街地での抗争に拡大することによってパワーアップしています。前作に劣らぬハードな銃撃戦と肉弾戦だけでなく、日本国内では不可能なカーチェイスまであり、抗争というより戦争と形容する方が適当なほどです。
 
この1作目と2作目の変化は、『エイリアン』シリーズと似ています。『エイリアン』は宇宙船内という閉鎖された空間でのサスペンスだったのに対し、『エイリアン2』は広い空間で銃器をぶっ放す戦争アクションに変わったことによって成功しましたから。しかし、『エイリアン』シリーズは監督が別人(1作目はリドリー・スコットで、2作目はジェームズ・キャメロン)であるのに対し、本シリーズはギャレス・エヴァンス一人が監督しているという点で異なります。
 
肉弾戦については、前作と同様、実践的格闘術「シラット」をベースにした超絶アクションになっています。そこにベースボール・バットマン(ベリー・トリ・ユリスマン)&ハンマー・ガール(ジュリー・エステル)というクセが凄い殺し屋兄妹まで登場し、ヤヤン・ルヒアンが前作と異なる役で出演するという、『仁義なき戦い』シリーズにおける松方弘樹や梅宮辰夫のようなサービスまでされたら、もうお腹いっぱいになります。
 
その上、松田龍平、遠藤憲一、北村一輝が日本人ヤクザ役で出演しています。それで邦題に「GOKUDO」の文言が付いたのでしょう(原題はシンプルに「The Raid 2:Berandal」です)。しかし、彼らがアクションシーンに参加することはありません。多忙な人たち(特に遠藤)なので、それなりの練習期間を作ることは困難ですから。そこは少しガッカリしました。それでも、3人がほぼ日本語台詞のみというのは、『キル・ビル』に登場する日本人ヤクザ(麿赤兒、國村隼、菅田俊)と同じで面白かったです(北村は同作にも出演しています)。
 
本作はマフィア同士の凄惨な争いを描きながら、ちょっとした笑いを挿んできます。違法ポルノ工場にいる女優が男優を犯すシーンや、マフィアのボスであるバンクン(ティオ・パクソデウー)が釣った魚をリリースしている隣で死体入りのバッグもリリースしているシーンは、ブラックユーモアが効いています。こうした笑いの入れ方は、三池崇史監督作品でよく見られます。エヴァンス監督は三池作品を観たのでしょうか。本作に出演している松田、遠藤、北村は三池作品に何度か出演していますからね。
 
エヴァンス監督は、三池作品だけでなく、いわゆる雑誌『映画秘宝』系の作品を好んで観ているような気がします。マフィアの潜入捜査物は『インファナル・アフェア』、マフィアの親子物は『ゴッドファーザー』、更に今読んでいる記事でタイトルを挙げてきた『エイリアン』『仁義なき戦い』『キル・ビル』も、悉く『映画秘宝』読者が好む作品です。それらの作品の要素を取り入れて構成した本作が、『映画秘宝』にシンパシーを感じる私に高評価されるのは至極当然なことなのです。
 
★★★★★(2018年12月1日(土)DVD鑑賞)
 
ラマたち囚人が刑務所内で大暴れするシーンは昔の東映作品みたいです。楽天市場

 

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