
生命の神秘を探求する若き科学者が生み出したものは醜悪な怪物だった…(KINENOTEより引用)。1910年製作で、日本劇場未公開作品。監督はJ・サール・ドーリーで、出演はオーガスタス・フィリップス、メアリー・ファラー、チャールズ・スタントン・オーグル。
1931年にユニヴァーサル社で制作された、有名な『フランケンシュタイン』よりも先に作られた、世界初の『フランケンシュタイン』実写映画です。白黒サイレント映画で、上映時間16分の短編です。
その世界初の「フランケンシュタインの怪物」は、上掲画像のビジュアルです。1931年版の怪物のビジュアルが記憶にあるので、「何これ?」という感想しか出ません。
また、怪物誕生シーンも大きく異なります。1931年版はメアリー・シェリーの原作小説に忠実で、死体を繋ぎ合わせ、電気を流すことによって誕生します。本作では、大きな鍋で材料や薬品をグツグツ煮ることによって誕生します。鍋から出てきた骸骨に筋肉が貼り付いて、人間の形になるという特撮を用いて表現しています。
本作の怪物は、原作の怪物が死体を繋ぎ合わせた「再生人間」であるのに対し、ゼロから生命を作った「ホムンクルス(人造人間)」と呼ぶべきものです。原作からの逸脱が大きいです(ホムンクルスは『フランケンシュタインの花嫁』に登場します)。
原作からの逸脱は、それだけではありません。ストーリーを追っていくと、怪物の正体は、フランケンシュタイン博士の邪心の化身であり、博士にしか見えない、実在しない存在だと解釈できるのです。
原作には科学小説の一面があるにもかかわらず、鍋でグツグツ煮て怪物を作ったり、一人にしか見えない怪物を登場させたりするのは、如何なものかと疑問しか生じません。
★☆☆☆☆(2018年11月29日(木)インターネット配信動画で鑑賞)
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