
2006年にイラクで実際に起こった米兵による14歳少女のレイプ、及び彼女を含む家族4人を惨殺した事件を題材にした衝撃作(映画.comより引用)。2008年日本公開作品。監督はブライアン・デ・パルマで、出演はパトリック・キャロル、ロブ・ドゥヴェニー、イジー・ディアス、マイク・フィゲロア、タイ・ジョーンズ、ケル・オニール、ダニエル・スチュワート・シャーマン。
一種の戦争映画であり、サスペンス映画を得意とするブライアン・デ・パルマが監督するのは、意外な印象を受けます。しかし、デ・パルマは実際にベトナム戦争で起きた、少女強姦殺人事件を題材にした『カジュアリティーズ』を監督したことがあるので、似た題材である本作を手掛けても意外ではありません。女性が酷い目に遭う映画と広く解釈すれば、デ・パルマ監督のサスペンス映画とも共通します。
ベトナム戦争でもイラク戦争でも米兵は地元女性に対する強姦事件を起こしており、ベトナム戦争に参加した韓国兵は地元女性との間に生まれた子供(ライダイハン)を捨てたことが問題になってきました。それなのに、「大日本帝国の皇軍は地元女性に対する強姦などしなかった」などと自称愛国保守から言われても、「それは嘘だ。同じ人間だもの」と反論したくなります。これらの悲劇は、国籍や民族を問わない戦争の真実でしょう。
本作に話を戻しましょう。本作は、フェイクの記録映像や動画サイト映像をパッチワークする、フェイク・ドキュメンタリー(またはモキュメンタリー)方式で演出されています。この方式は作品をリアルに見せ、ホラー映画では『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』がヒットしてから、よく用いられています。フェイクの記録映像を本物らしく見せるには、編集がないワンカット長回しで撮影しなければならず、それ故に長回し撮影が得意なデ・パルマ監督がオファーされたのでしょうか。
そうした技術面を重視したせいなのか、同じイラク戦争を題材にした『ハート・ロッカー』や『ゼロ・ダーク・サーティ』、『アメリカン・スナイパー』に比べ、戦場の緊張感がない演出になっているのは欠点です。赴任先でテロリストが現れるかもしれないという疑心暗鬼になり、PTSDで心を病む帰還兵が多数いる現実があるのに、本作の戦場は随分とのんびりしているように見えます。その米兵たちの退屈が伝染して、観客も退屈になりそうです。
そうした退屈な流れの末、エンドロール前に本物のイラク戦争による死傷者の写真を見せたのは大失敗です。作り手としては、戦争の残酷さを告発的に主張したい意図はあったのでしょう。しかし、そこで本物を見せると、それまでの部分が嘘っぽくなってしまいます。どうやっても本物には勝てませんから。それだったら、フェイク・ドキュメンタリー方式を採らず、全編ドキュメンタリーにするか、むしろドラマティックな劇映画にするかした方が、主張したいメッセージは伝わったのはないでしょうか。
★★☆☆☆(2018年11月23日(金)DVD鑑賞)
リダクテッド(redacted)は「編集済み」という意味です。