
孤児院で育った伊達直人は悪役レスラー養成機関「虎の穴」を卒業し、覆面レスラー「タイガーマスク」としてプロレス界に君臨する。直人は正体を隠してファイトマネーを孤児院に寄付するが、その行為を裏切りとみなした「虎の穴」は、さまざまな刺客を送ってタイガーマスクを倒そうとする(映画.comより引用)。2013年公開作品。監督は落合賢で、出演はウエンツ瑛士、夏菜、良知真次、勝信、宮地真緒、遠藤久美子、辻よしなり、ビッグ村上、金山一彦、真樹日佐夫、三池崇史、温水洋一、平野綾、釈由美子、哀川翔。
梶原一騎原作&辻なおき作画のプロレス漫画を初実写化した作品です。初実写化と聞いて意外だと感じるのは、現実のリング上で活躍するタイガーマスクを見ているからですね。
原作漫画が半世紀も前の作品なので、設定は現代風に大幅アレンジされています。虎の穴で特訓した伊達直人(ウエンツ瑛士)は、ミスターX(哀川翔)が開発したマスクを装着することによって、全身スーツのタイガーマスクに変身するのです。そして、ネット配信されている格闘場で着ぐるみ感ある対戦相手と戦います。実況が辻よしなりとは言え、これではプロレスではなく特撮ヒーロー物です。
おそらく流行のアメコミ実写化映画のテイストを取り入れようとしたのでしょう。マッチョ体型ではなく、線の細いヒーローであるスパイダーマンあたりを意識したのかもしれません。確かにウエンツならば、スパイダーマン役を演じたトビー・マグワイア(『スパイダーマン』)やアンドリュー・ガーフィールド(『アメイジング・スパイダーマン』)とイメージは近いでしょう。しかし、そんなタイガーマスク像では、梶原ファンが納得しません。
ストーリーやVFXが粗いので、梶原ファンだけでなく、今時の若い観客も納得できないでしょう。せいぜいのところ、虎の穴の教官役を演じる釈由美子や宮地真緒が、黒レザーのボンデージ風ファッションで身を包んでいるのは、殿方の納得(?)を得られるでしょうけど。
理想を言わせてもらえば、タイガーマスク役は、ウエンツより体格がガッチリして、運動能力が高い哀川に演じてもらいたかったです。マスクを装着すればパワーアップする設定は有りにしましょう。そして、本作にカメオ出演している三池崇史が監督すれば良かったのです。三池は『ボディガード牙』や『愛と誠』を監督した経験があるので、梶原作品について理解はあるはずですから。しかし、それでは『タイガーマスク』ではなく、『ゼブラーマン』の二番煎じになるでしょうね。
本作で監修を務め、出演しているのは、梶原の実弟である作家の真樹日佐夫です。真樹の遺作となった本作が駄作となってしまったことは、梶原や真樹が描いてきた男の世界が過去の遺物になったようで、非常に悔やまれるのです。
★☆☆☆☆(2018年11月21日(水)DVD鑑賞)
男のロマンを熱く描いた梶原一騎作品を見直してみましょう。