明治二十年発行の『普通讀本四編上』を紹介します。なお、読み易くするため、地の文は平仮名に統一し、文字化けを防ぐため、漢字は所々新字体に改めます。
第二十六課 前課の續
茲に又保險會社と名くるものあり、火災、海上、生命等の危險を保任する會社にして、其方先づ此等の保險を依頼せんと欲する人、其社に約束の少額金員を投じ置けば、會社は萬一の危險を保任して、其多額の損失を辨ずることを承認するものなり。故に火災を請け負はしむれば、家を焼くも、居處に迷ふの憂なく、海上の危險を保證せしむるものは、難破の厄に遭ふも、舩載の貨物を失ふの慮なく、生命を保任せしむれば、身死して遺族の道路に凍餒するの悲なし。故に文明諸國の人は、是等の保險會社に金を投ずるもの甚だ多しと云ふ。此他鐵道會社、郵舩會社、物産會社、牧畜會社等の諸會社あり、中にも鐵道、郵舩、通運の會社の如きは、海陸の運輸を便にし、内外の貿易を通ずるものなれば、一國經濟の業に關して、甚だ重要なるものなり。
【私なりの現代語訳】
ここにまた保険会社と名称するものがあり、火災、海上、生命などの危険を保障する会社にして、そちらは先ずこれらの保険を依頼しようとする人が、その会社に約束した少額の金銭を支払っておけば、会社は万が一の危険を保障して、その多額の損失を補償することを承諾するものです。故に火災を請け負わせれば、家屋が焼失しても、居所に迷うおそれがなく、海上の危険を保証させたものは、難破の事故に遭っても、船に載せた貨物を失うおそれがなく、生命を保障させれば、自身が死んで遺族が道路で飢え苦しむという悲劇がありません。故に文明諸国の人は、これらの保険会社に金銭を支払う者がとても多いと言われます。この他にも鉄道会社、郵船会社、物産会社、牧畜会社などの諸会社があり、中でも鉄道、郵船、通運の会社のようなものは、海陸の運輸を便利にし、国内外の貿易を取り次ぐものなので、一国の経済活動に関して、とても重要なものです。
【私の一言】
前課に続き、明治時代における富国強兵の「富国」について教えています。保険会社について多く言及しています。現在では、保険に入りたくても、保険料が高くて入れないという人が珍しくないでしょうね。
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