【映画評】フリーズ・ミー | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

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幸せな生活から一転、自分をレイプした男たちを殺害しては冷凍庫にフリーズしていくOLの転落を描いたスリラー(映画.comより引用)。2000年公開作品。監督は石井隆で、出演は井上晴美、鶴見辰吾、北村一輝、松岡俊介、伊藤洋三郎、飯島大介、竹中直人。
 
井上晴美が主演で、石井隆作品における堕ちていく女「名美」の役割を演じています。巨乳グラビアアイドルから女優に転身する契機になったのが本作であり、大胆にヌードを披露しています。それで色気はあるかと問われたら、そうでもありません。髪型がベリーショートであり、昔競泳をやっていたが故に肩幅が広く、どうにもアスリート感が漂います。『エイリアン』でリプリー役を演じたシガーニー・ウィーヴァーに近いものがあります。『エイリアン』でエイリアンに追われるリプリーは、レイプから逃れようとする女性のメタファーであるという解釈に沿えば、本作で井上を起用したのは両作品をリンクさせる意図があったのではないでしょうか。
 
井上が演じる、ちひろの生活をぶち壊しに来て、返り討ちに遭ってしまうクズ男3人を北村一輝、鶴見辰吾、竹中直人が演じています。三者とも見事なクズっぷりを見せるので、ちひろに殺されても一切同情の余地はありません。脚本を書いた石井監督は、クズ三連発だと観客が飽きてしまうと考えたのか、北村と竹中をオラオラ系のクズにして、その間に入る鶴見をネチネチ系のクズにするという一工夫を施しています。
 
石井作品の定番である水を用いた演出が、随所に盛り込まれています。雨やシャワーだけでなく、作品の冒頭で雪が降るという「変化球」もあります。また、シャワー室での殺害シーンは『死んでもいい』で、腐敗していく死体の処理に困るのは『ヌードの夜』であり、過去の作品からの流用もあります。前述のとおり、ちひろが「名美」の役割であれば、堕ちていく彼女を愛し続ける男「村木」の役割は、松岡俊介が演じる野上になります。しかし、野上のキャラクターでは「村木」感が弱く、そこが惜しいところです。
 
本作は、ちひろの視点から物語が進行していきます。これをクズ男3人の視点から物語を見ると、どうなるでしょう。いい女とヤれるというエロ目的で集まった男たちが、次々と命を奪われるという惨劇になります。ちひろは連続殺人鬼です。これはグロ描写が過激なホラー映画『ホステル』と似ており、ホラー映画にありがちな物語でもあります。例えば、浮かれた若者たちが田舎のキャンプ場に行くと、片っ端から惨殺されるのは『13日の金曜日』です。本作はホラー映画を裏返しの視点から見た作品なのです。
 
★★★☆☆(2018年10月20日(土)DVD鑑賞)
 
井上晴美は『GONINサーガ』にも出演しています。
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