【映画評】テナント 恐怖を借りた男 | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

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パリの古びたアパートに空き部屋を見つけた青年トレルコフスキーは、前の住人である女性シモーヌが投身自殺を図り重体となっていることを知り、病院へ見舞いに行く。やがてトレルコフスキーはシモーヌが死亡したことからアパートへ引っ越すが、奇妙な住人たちに悩まされるうちに被害妄想を募らせていく(映画.comより引用)。1976年製作で日本劇場未公開作品。監督と主演はロマン・ポランスキーで、出演はイザベル・アジャーニ、メルヴィン・ダグラス、ジョー・ヴァン・フリート、ベルナール・フレッソン、シェリー・ウィンタース。
 
ロマン・ポランスキーが監督と主演を兼務しています。監督兼主演で有名どころには、チャールズ・チャップリン、クリント・イーストウッド、ウディ・アレン、北野武(ビートたけし)が挙げられます。
 
本作が1976年製作で、同年のカンヌ国際映画祭でプレミア上映されたにもかかわらず、日本での劇場公開がお蔵入りとなったのは、やはり1977年にポランスキーが少女への淫行容疑で逮捕されたことが理由でしょうか。ちなみに、前述のチャップリンとアレンにも未成年者との性交(疑惑)という醜聞があるのは奇遇です。
 
物語の舞台がパリなので、国際色豊かなキャスティングになっています。例えば、シモーヌの友人ステラを演じたイザベル・アジャーニは、アルジェリア人の父とドイツ人の母の間に生まれたフランス人です。そのアジャーニは、眼鏡っ娘で『燃えよドラゴン』を観て性的興奮を感じる変な女ステラを演じています(この作品セレクトは、ポランスキーがブルース・リーから格闘技を教わっていた関係からでしょう)。
 
ステラだけではなく、主人公トレルコフスキー(ポランスキー)を取り巻くアパートの住人も、どこか変わった人だらけです。トレルコフスキーは亡きシモーヌが遺したドレスを着て女装し、彼女と同化しようとする狂乱状態に陥りますが、それはオカルト的な呪いが原因ではなく、住人たちから受けた有形無形の重圧で精神に異常を来したと解釈するのが妥当です。すなわち、本作はポランスキー監督のローズマリーの赤ちゃん』の焼き直しなのです。
 
そして、トレルコフスキーが住人たちによって殺されるという被害妄想を募らせるのは、ポランスキー自身がナチスドイツによるユダヤ人狩りから逃れるため、周囲の他人に対する不信や敵視を続けてきた実体験に基づくものでしょう。本作も『ローズマリーの赤ちゃん』も、ポランスキーの実体験に基づく感覚で作られているので、説得力があるのです。
 
★★★☆☆(2018年9月29日(土)DVD鑑賞)
 
淫行容疑によってポランスキーはアメリカに戻れぬ流浪の人になりました。
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