
一九世紀のメキシコを舞台に、美女五〇人を奪った兇悪ギャングと、それを執拗に追う盲の一匹狼の対決を描く(映画.comより引用)。1972年日本公開作品。監督はフェルディナンド・バルディで、出演はトニー・アンソニー、リンゴ・スター、アグネタ・エクミール、ロイド・バチスタ、マグダ・コノプカ。
明らかに『座頭市』をパクったマカロニウエスタンです。主演のトニー・アンソニーは製作も兼ねていますが、これはトム・クルーズみたいと言うより、勝プロダクション設立後の勝新太郎みたいと言うべきでしょう。
ところで、トニー・アンソニーは変な芸名です。何故ならトニーはアンソニーの愛称ですから、トニー・アンソニーは姓名どちらも同じ語ということになるからです。日本の芸能界で言ったら、ダチョウ俱楽部の寺門ジモンと同じネーミングセンスです。
さて、映画に話を戻しましょう。本作には、ビートルズのリンゴ・スターが出演しています。しかも正義のヒーローではなく、悪役です。演技としては、特筆すべきものはありません。『野獣暁に死す』の仲代達矢と同じく、イタリア語の台詞は吹き替えなのだろうなと思った程度です。
勧善懲悪的な本家西部劇と異なり、主人公も含めて善人不在なところがマカロニウエスタンです。盲の男も兇悪ギャングも軍の将軍も騙し合います。しかし、見方によれば、意外と道徳的な映画でもあります。美女50人が脱走するシーンでは、激しいアクションを見せ、射殺される美女もいます。女だからと言って手加減をしない、男女平等の精神の表れです。また、盲の男に美女たちの護送という大仕事を与え、しかも健常者たちと互角以上に戦うシーンがあるのは、バリアフリーの精神の表れです。すなわち、本作は人類皆平等という素晴らしいスタンスの映画なのです。
まあ、このように屁理屈をこねて、志が高い映画のようにデッチ上げても、本作は物語のテンポが悪く、アクションシーンの緊張感を欠くB級映画に過ぎませんけどね。
★★☆☆☆(2018年8月31日(金)DVD鑑賞)
美女のヌードシーンがあっても、期待するほどではありません。