第二十三課 老農子を戒む。 | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

明治二十年発行の『普通讀本四編上』を紹介します。なお、読み易くするため、地の文は平仮名に統一し、文字化けを防ぐため、漢字は所々新字体に改めます。
 
第二十三課 老農子を戒む。
 
昔一人の農夫あり。老病に罹りて全快の程覺束なき時に至り、つらつら死後の事を案じて、農は我が生涯勉めし業なれば、子にも必ず之を継がしめんと思ひ、種々に工夫し、兄弟の子を呼び、遺言して曰へるやう我が遺物として、汝等與ふべきものは、我が田畑のみなり。他の寶物は、地面の下一尺許りなる處に埋め置きたれば、汝兄弟にて永くこれを守り、決して他人の手に譲り渡しなどすべからず。さて兄弟は此遺言を聞き、退きて思ふやう、父が寶物と云ひしは、かねて貯え置ける金子を畑に埋めしに相違無しと、竊に相喜び居れり。後幾程もなく、父没しければ、兄弟力を合せて、父の遺せる田畑を、隅々まで鋤きかへし索めたれども、一銭だも見出さざりければ、兄弟大いに望を失へり。されども地面を鋤きかえしたるによりて、其年の作物は、殊によく實りて、秋の収穫常に倍し、眞に寶物を掘り得たるに異ならざりしとぞ。これを聞きても、守るべきは親の戒なり。
 
【私なりの現代語訳】
 
昔一人の農夫がいました。年老いて病気に罹って全快する程度まで覚束ない時になり、よくよく死んだ後の事を考えて、農夫は自分が生涯かけて尽力してきた仕事なので、子にも必ずこの仕事を継がせようと思い、いろいろと工夫し、子たちを呼び、遺言として言ったことには「私が遺産として、お前たちに与えられるものは、私の田畑だけだ。他の宝物は、地下約30センチの所に埋めておいたので、お前たち兄弟で長くこれを守り、決して他人の手に譲り渡してはいかん」と。さて子たちはこの遺言を聞き、帰ってから思うには、「父が宝物と言ったのは、かねてから貯えておいた金銭を畑に埋めたのに違いない」と、密かに喜び合っていました。後に程なくして、農夫が亡くなったので、子たちは力を合せて、農夫が遺した田畑を、隅々まで掘り返して探したけれども、1銭も発見できなかったので、子たちは大いに失望しました。それでも地面を掘り返したことによって、その年の作物は、特に良く実って、秋の収穫量は通常の倍になり、正に宝物を掘り当てたのと変わらなかったのです。これを聞いても、守らなければならないのは親の戒めです。
 
【私の一言】
 
飼い犬に残飯を与える時、肉をご飯の底に隠しておくと、犬は肉欲しさにご飯をガツガツ食べるという話を思い出しました。
 
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