サザンオールスターズのプレミアムアルバム『海のOh,Yeah!!』収録曲『闘う戦士たちへ愛を込めて』です。
映画『空飛ぶタイヤ』の主題歌であり、企業戦士=サラリーマンの悲哀をラテン調で歌っています。作詞した桑田佳祐は、青山学院大学に籍を置きながら(後に除籍)サザンでメジャーデビューしているので、サラリーマン経験はありません。それ故、本作の歌詞は世間に流布している企業やサラリーマンに関する情報から、桑田が想像力を働かせて書いたものと思われます。その歌詞が世のサラリーマンから共感を得ているとなれば、桑田は表現者として優れていることになります。
サラリーマン経験がないにもかかわらず、サラリーマンについての歌を作ってヒットさせた者として、青島幸男が挙げられます。青島はハナ肇とクレージーキャッツの数々の楽曲を作詞しており、「サラリーマンは気楽な稼業と来たもんだ」という歌詞から始まる『ドント節』などサラリーマンについて歌ったものがあります。また、クレージーキャッツのメンバーである植木等主演の『ニッポン無責任時代』に、それらの楽曲が使用され、同作から始まる「無責任」シリーズはヒットしました。これらから、サラリーマン経験がない青島と植木によって日本のサラリーマン像が形成されたという、ちょっと不思議な歴史があるのです。
その青島が構成作家を務め、クレージーキャッツが出演していたのが、テレビ番組『シャボン玉ホリデー』です。桑田は同番組から音楽的にも、お笑いセンス的にも影響を受けています。ロックバンドであるサザンが歌謡曲的なアプローチの楽曲を抵抗なく作り、サザンのライブ演出にミニコントの要素が含まれるのは、その表れです。また、サザンの所属事務所アミューズの会長である大里洋吉は、『シャボン玉ホリデー』を制作していた渡辺プロダクションの元社員であるので、桑田の方向性を理解し、バックアップしてきました。桑田と大里の運命的な出会いが、サザンを国民的バンドにまで成長させた一因とも言えます。
こうして考えると、本作には『ドント節』の現代版返歌という意味合いがあります。しかも『ドント節』のサラリーマンは気楽でグータラな生活を送っているのに対し、本作のサラリーマンは巨大都市で過酷な生存競争に晒されているという点に、時代の違いが強烈に反映されているのです。
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