
服役を終えた中部と、彼がいない間に関東犯罪シンジケートのボスになった星野の争いに、関西から進出してきた三鬼が絡む抗争。そこにシンジケート壊滅の任務に就いた検事の芥川が関わってくる。1962年公開作品。監督は井上梅次で、出演は鶴田浩二、高倉健、佐久間良子、久保菜穂子、梅宮辰夫、安部徹、丹波哲郎、三国連太郎。
タイトルに「暗黒街」とあり、シンジケートの収入源が酒の販売であることから、アメリカの禁酒法時代を描いたギャング物を、日本を舞台にして移植した作品だと解することができます。
高倉健は星野(安部徹)の子分である朴を演じており、いつもサングラスをかけ、後の寡黙な「健さん」のイメージと異なるキャラクターです。準主役クラスなのに、前半は出番が少ないと思っていると、後半で重要な役だと分かります(ヒントは『インファナル・アフェア』)。
中部(鶴田浩二)の子分である白川を演じるのは、当時20代の梅宮辰夫です。『不良番長』以降のイメージと異なり、シュッとシャープな体型です。本作公開時は高倉の方が格上ですが、後の『網走番外地』では主役の座を争うまでになります(高倉が北海道ロケを渋っていると、主役を梅宮に替えるぞと言われたそうです。それにしても梅宮主演の『網走番外地』が実現していたら、どんな作品になったのでしょうか)。
監督の井上梅次は、邦画6社(新東宝、日活、東宝、大映、東映、松竹)でメガホンを撮ったことがあります。フリーの身分でもオファーが来るのは、きちんと一定レベルの娯楽映画を仕上げる職人タイプだったからでしょう。
井上監督は、冒頭から怒涛の襲撃3連発をツカミにして、複雑な人間関係を混乱させることなく、スピーディーに展開していきます。そして終盤は、舞台が日本とは思えないほどの大銃撃戦で、中部と三鬼(丹波哲郎)が正面から銃を向け合います。これはジョン・ウー監督の『男たちの挽歌』に近いノリです。
井上監督は香港で映画を撮っていた時期があります。それによって井上監督の演出センスや日本での作品が、香港の映画人にも影響を与え、『男たちの挽歌』に代表される「香港ノワール」の礎になったというのは、考え過ぎでしょうかね。
★★★☆☆(2018年4月9日(月)DVD鑑賞)
芥川役の三国連太郎は佐藤浩市に似ていますね(当然)。